巨匠や豪華作品並ぶ今年の主要美術展

2つの「クリムト展」「ハプスブルク展」も

 2019年に東京で開かれる主な美術展スケジュールを紹介する。海外美術館から届けられる企画展として注目は、巨匠グスタフ・クリムトの2つの作品展や「ハプスブルク展」などスケール大きい展覧会が見どころになるが、「松方コレクション展」や「原三渓の美術」など著名コレクションの公開も関心を集めそうだ。また巨匠重点型の展示とは異なる、「ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」や「円山応挙から近代京都画壇へ」など、展示の企画力でアピールする傾向も目立ってきている。

「クリムト展 ウィーンと日本1900」=東京都美術館、4月23日~7月10日、入館料(一般):1,600円。

 東京では、約30年ぶりとなるグスタフ・クリムト(1862~1918)の大規模な作品展。オーストリアの国民的画家として高い評価を得ているが、今回は過去最多となるクリムトの油彩画を中心に展示される予定。クリムトは、19世紀末のウィーンを代表する作家として有名で、同市内の劇場や美術館などの壁画を制作している。金箔を初めて油彩画に使用したことでも、よく知られている。今回は“黄金色時代”の代表作の一つ《ユディトⅠ》などが出品され、話題を集めそうだ。

「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」=国立新美術館、4月24日~8月5日、一般:1,600円。

 前述の「クリムト展」とほぼ同時期に、クリムト中心の作品展が東京で開かれる。クリムト愛好家には、集中的に鑑賞できる恵まれたシーズンとなる。本展では、クリムトと共に、エゴン・シーレとオスカー・ココシュカも紹介されている。クリムトは独自の装飾的、官能的な画風を確立し1897年頃、進歩的な造形表現を目指すウィーン分離派を結成した。また、若手の芸術家を支援することでも知られる。シーレとココシュカはクリムトから強い影響を受け、20世紀初頭のオーストリア表現主義の先達として認められるようになった。今展では、シーレの《自画像》など注目したい作品が並ぶ。

「特別展 国宝東寺―空海と仏像曼荼羅」=東京国立博物館・平成館、3月26日~6月2日、一般:1,600円。

 真言宗東寺派総本山の東寺(教王護国寺、京都市南区)は823年、嵯峨天皇より密教・真言宗の開祖・空海に下賜され、以来約1200年間、信者はじめ多くの人々に親しまれてきた。東寺は真言密教の根本道場だが、空海ゆかりの名宝や、仏教美術の宝庫として知られる。特に講堂には、スケールが大きい立体曼荼羅(まんだら)の世界が広がる。空海の構想に基づく仏像群空間。中央に大日如来を据えた五仏と、右側には五菩薩、左側に五大明王が配置されている。この周囲を四天王、梵天(ぼんてん)、帝釈天(たいしゃくてん)が守護する密教空間が出現する。今回の展示では、これら仏像群の21体のうち、15体が出品される予定で、最近の仏像鑑賞ブームもあって、新聞や美術雑誌などでも紹介されている。

「ハプスブルク展」=国立西洋美術館、10月19日~2020年1月26日。

 秋の美術シーズンの中心となるのが、この「ハプスブルク展」。日本・オーストリア友好150周年記念―600年にわたる帝国コレクションの歴史―とサブ・タイトルにあるように、豪華な美術展だ。ウィーン美術史美術館の収蔵品が中心で、ハプスブルク家の収集品と肖像画を中心に出展される。有名なディエゴ・ベラスケスの《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》も出品される予定。

「コートールド美術館展」=東京都美術館、9月10日~12月15日。

コートールド美術館はロンドン大学に付属するミュージアムで、フランスの印象派やポスト印象派のコレクションで知られている。エドゥアール・マネが死去前年の1882年に、パリのミュージックホールを描いた最後の作品《フォリー=ベルジュエールのバー》などが来日予定。   (陶)