官能美あふれる初の金箔作品《ユディトⅠ》
政治、学術、文化を中心に大いに発展した19世紀末のウィーン――。グスタフ・クリムト(1862~1918)は、その隆盛期にあった芸術界の保守的組織から脱退し「ウィーン分離派」を若手芸術家らと結成した。東京都美術館で話題豊かな「クリムト展 ウィーンと日本1900」が開催中。
■「ウィーン分離派」結成、制作活動を発展
「ウィーン分離派」の巨匠として知られるクリムトは、ウィーン郊外に生まれる。ウィーン工芸美術学校に入学、卒業後、弟らと室内装飾をするアトリエを経営した。美術館や劇場など壁画装飾に打ち込み、評価を得ていた。しかし、1897年に保守的だった造形芸術家協会を脱退して「ウィーン分離派」を結成する。
本稿「アーツ・ワールド」の前号では、2019年開催の主要な日本や海外からの芸術展開催情報を紹介したが、「クリムト展」は本年度の中では最高レベルの展示会となる。過去最多となるクリムトの油彩画が出品されるのも特色の一つ。最大の話題である《ユディトⅠ》は、祖国を救うため、敵将を惑わして首を切り落とした女性を官能美あふれる筆致で描いている。油彩画に初めて金箔が用いられた作品としても有名。


クリムトの作品の魅力は、官能的な雰囲気を持つ女性像を描くことと豪華な装飾性にあるとされる。《ユディトⅠ》は、その魅力が存分に盛り込まれている。クリムト作品には、日本の琳派やその伝統的な流水文様なども見ることができる。このほか《赤子(ゆりかご)》《リーヘンネベルクの肖像》《アッタ―湖畔のカンマ―城Ⅲ》《女の三世代》など、クリムト愛好家には楽しみな作品が来日。
■シーレやココシュカを支援
クリムトは、日本美術研究も熱心だった。1873年のウィーン万博での日本ブームもあり、浮世絵や甲冑(かっちゅう)も所有していた、という。金箔をたっぷり用いた「黄金様式」制作など、いわゆるジャポニズムの影響があったという見方もある。
またクリムトは、若手芸術家の支援活動にも熱心だった。中でもエゴン・シーレ(1890~1918)やオスカー・ココシュカ(1886~1980)など若手芸術家の制作展示活動なども世話していた、という。この二人は、20世紀初頭のオーストリア表現主義を代表する作家。クリムトの影響を受け、ウィーン分離派から表現主義派へと大成した。画風は、強烈な個性の込められた作品で、見る人を打ちのめす迫力があるといわれる。 (陶)
- 会 期:7月10日まで開催中
- 休室日:5/20(月)、27(月)、6/3(月)、17(月)、7/1(月)
- 開 館:9:30~17:30
*金曜日は午後8時まで*入室は閉室の30分前まで - 入館料:1,600円(学生割引、シルバー割引あり、中学生以下無料)
- アクセス:JR上野駅下車(公園口)徒歩7分
- 問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)