600年にわたる華麗な大作群と最高級工芸品

国立西洋美術館でハプスブルク展

 「ハプスブルク展」―600年にわたる帝国コレクションの歴史―が、国立西洋美術館(東京・上野)で開催中。華麗なハプスブルク家の至宝、代表作が出品され、今秋の大型美術展として注目を集めている。

ウィーンとブダペスト国立西洋美術館の約100点

 13世紀後半以降、ハプスブルク家がヨーロッパで数世紀にわたり、権勢を誇り、君臨した地域・図は広大だ。15世紀には神聖ローマ帝国皇帝の位につき、同帝国解体後はオーストリア=ハンガリー二重帝国を統治した(1867~1918)。本展は、サブ・タイトルに「600年にわたる帝国コレクションの歴史」とあるように、同家の皇帝や王により収集された、数々の貴重な美術品が展示されている。ウィーン美術史美術館所蔵の約100点にのぼる絵画・工芸品・武具などが中心。

見どころはベラスケスの《青いドレスの…》

最大の見どころは、やはりベラスケスの晩年(これが鑑賞するうえでポイントの一つである)の大作《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》だろう。スペイン・ハプスブルク家のフェリペ4世に重用された宮廷画家、ディエゴ・ベラスケスが、7,8歳頃の王女を描いた作品。王女という格調高い雰囲気の中に漂う少女らしい、あどけなさを見事に表現したといわれている。当時は、離れた親戚や婚約の際の貴重な写真替わりだった。
 また《皇妃マリア・テレジアの肖像》〔マルティン・ファン・メイテンス(子)〕などの大作も見逃せない。

騎士が着装する華麗な甲冑などの逸品も展示

 マクシミリアン1世などハプスブルク家の王たちが所蔵した甲冑(かっちゅう)などの武具や、貴石細工の食器類、日時計といった珍しい展示もあり、宮中晩さん会の図からは、当時の貴族たちの文化や生活ぶりもしのぶことができる。オーストリア=ハンガリー二重帝国皇帝で、美貌の皇妃エリザベートの夫だったフランツ・ヨーゼフ1世のフリントロック式ピストルは、金やダイヤの装飾が壮麗で実に見事。武器ということを忘れさせ、ため息が漏れる。
 絵画には、同家内部のコレクションの交換により、もたらされた旧メディチ家所蔵のカルロ・ドルチの聖母子像も含まれる。赤子のイエスが一歩踏み出すポーズを採っており、珍しい構図。
 ウィーン美術史美術館は、ルーヴル、プラドと共に、ヨーロッパ3大美術館の一つといわれている。同家の代々の美術・工芸品の大規模な収集で有名なウィーン美術史美術館だが、ブリューゲルの作品収集などでも知られている。本展では、豪華な大作絵画を鑑賞しながら、併せて中世から近代へのヨーロッパ史をたどりながら展示を楽しみたい。 (陶)

  • 会 期: 2020年1月26日(日)まで開催中
  • 休館日:月曜日
    〔ただし1月13日(月・祝)は開館〕、12月28日(土)~1月1日(水・祝)、1月14日(火)
  • 開 館:9:30~17:30
    〔 金・土曜は20:00まで、ただし11月30日(土)は17:30まで〕
    ※入館は閉館の30分前まで
  • 入館料:一般 1,700円
    〔学生割引あり(要証明)、中学生以下無料〕
  • アクセス:JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
  • お問い合わせ:03−5777−8600(ハローダイヤル)