「きもの」「ヨコハマ トリエンナーレ」に注目
当サイトの「アーツ・ワールド」は、新型コロナウイルス禍もあって今春以降休載していたが、美術館中心の文化イベントも新しい型の事業として活動を始めたのに伴い、リポートを再開する。
■ コロナ禍を機に本来の鑑賞のあり方へ
美術館・博物館の活動は、大きく様変わりした。いわゆる“3密”を避けるため、①予約制の導入②入場数の大幅な制限③見学者の集中化を防ぐ工夫④開館時間、回数の限定などが打ち出されている。コロナ被害が発生する以前に人気が集中した展覧・展示会に見られた館内大混雑型は完全に姿を消した。良好な環境を保ち、入場者一人一人が落ち着いて鑑賞できるようになったことは、本来の芸術鑑賞のあり方―とする声も少なくない。
一方、作品展の企画、大型スポンサー探し、海外からの作品輸送リスクなど新しい課題が出て来ている。三井記念美術館の清水眞澄館長(元成城大学学長)は、「美術館による文化活動は、大きな転機を迎えた。従来の運営方針を切り替えていかなければならない。これからは各館、それぞれの特性を生かした企画が必要になってくる。また、スポンサー側も新しい発想をしてくるので、工夫しながら対応していかなければならないだろう」と話している。

■「きもの」の原点をたどる 豪華展示
特別展「きもの KIMONO」が、東京国立博物館(東京・上野)で開かれている。日本を代表する服飾芸術として世界的に評価の高い「きもの」の美の世界を追究する大型展。
6曲1双の国宝「婦女遊楽図屏風」(7月5日までで展示替え)は圧巻だが、重要文化財の振り袖や小袖など、日本ならではの美の世界が色や模様で多彩に展開されている。「婦女遊楽図屏風」に描かれているのは、さまざまな衣装をまとった遊女たち。安土桃山から江戸時代初期の華やかなファッション・モードを見せているといわれ、その色や模様から当時の市民のおしゃれぶりが伝わってくる(8月23日まで)。
■7回目を迎えた「ヨコハマトリエンナーレ」
「ヨコハマトリエンナーレ2020」が横浜美術館(横浜市西区)で開催中。同展は3年に1度開催される現代アートの国際イベントで、ことしで7回目。2001年に第1回を開催して以来、関心を集め固定ファンも増えている。新型コロナウイルスの影響で本来の開幕より2週間ほど送れて開催された今展のテーマは、「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」。インド・ニューデリーを拠点とするアーティスト3人をディレクターに迎え、「時空を超える思考の旅へ誘います…」とアピールしている。企画、制作、表現形式においても、その独創的なアプローチに魅惑される。
■都心の美術館で新・改装が相次ぐ
ことしの美術展示イベントの特色は、新装や改装した大型施設が相次いでオープンしたこと。主なものはアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館=東京・京橋)、SOMPO美術館(東京・新橋)、サントリー美術館(東京・六本木)など。各館とも有名作品の所蔵で知られ、新装やリニューアルのオープンに際しては所蔵品を中心に独自のプログラムを展開した。
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コロナ禍が拡大する以前、今春は「法隆寺壁画と百済観音」や「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」などの大型美術展が予定されていた。いずれも世界的に高い評価の作品群を集めたイベントだっただけに、開催出来なかったことを惜しむ愛好家は少なくない。