2021年末から新年へ ——

「庵野秀明展」など関心高まる

 2021年の国内美術展は、昨年に続きコロナ影響の強い鑑賞環境下で展開された。現在、作品展を鑑賞するには、多くの美術館、ギャラリー等では「日時指定予約制」が浸透している。コロナの影響が広がる以前のライブ型展示は、コロナ対策を本格化させた結果、鑑賞システムが大きく変わった。
 鑑賞スペースの確保、人の流れなど安全性とゆとりを持った環境になった。これは、本来、鑑賞システムのあるべき姿として評価・歓迎されている。海外の大物作家や、著名コレクションなどの大型移動が不可能になり、来日が減ってはいるが、国内各館とも所蔵品の大量公開、新進作家紹介などにスポットを当てた企画を打ち出し注目された。
 今回、「アーツ・ワールド」では、2021年末から2022年へかけて、都内の主要美術館中心に展示を紹介する。アニメや現代美術など、美術展示イベントで新しい流れが出ている。

大展示室に1500点もの資料

 「庵野秀明展」が、国立新美術館(東京・六本木)で開かれる。「エヴァンゲリオン」シリーズや「シンゴジラ」などの特撮で、人気作家となっている。庵野秀明の初の個展、展示が大規模なスケールになっていることでも話題を集めている。1960年代から約10年にかけて使われたアニメの特撮作品の原画や造形物が展示された。
 「風の谷のナウシカ」の原画、シンゴジラに至るまで約1500点の作品や資料が並んでいる。これらが、2000平方メートルという超大型展示室に並んでいる。少年時代に、庵野の映像の世界に引き込まれた思い出を持つ人は多いだろう。庵野の作品を楽しみながら、この映像作家の軌跡をたどることができる。(12月19日まで)

最澄1200年大遠忌で天台宗関連の仏像、史料

 「最澄と天台宗のすべて」が東京国立博物館(東京・上野)で開催中。最澄の1200年大遠忌(だいおんき)を記念した特別展。天台宗を日本で広めた伝教大師最澄にまつわる仏像・資料などが展示されている。天台宗の総本山・比叡山延暦寺と、東の比叡山ともいわれる寛永寺(東京・上野)にまつわる仏像・文献史料などが集められた。同展は11月21日までだが、2022年に入って九州、京都の両国立美術館でも巡回展示の予定。

ミイラをCTスキャンで解析

 「大英博物館とミイラ展 古代エジプト6つの物語」が、国立科学博物館(東京・上野)で開催中(2022年1月12日まで)。大英博物館所蔵の古代エジプト史料展示は、常に人気を集めているが、今回は、特に、CTスキャンを用いた最新技術でミイラを解析していく。ミイラの究明は、人物、時代、背景へ迫るものとして以前から関心が高かった。今回のCTスキャン方式では、ミイラの包帯を解くことなく埋葬者の年齢、社会的地位などについて従来以上に、精密にアプローチし、説明している。


上記紹介レポートのほか――

サントリー美術館開館60周年記念展 「千四百年御聖忌記念特別展『聖徳太子 日出づる処の天子』」ポスター

「開館60周年記念展 千四百年御聖忌記念特別展『聖徳太子 日出づる処の天子』」(サントリー美術館、2022年1月10日まで)

「ゴッホ展――響きあう魂ヘレーネとフィンセント」(東京都美術館、12月12日まで)

「イスラエル博物館所蔵・印象派・光の系譜――モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」(三菱一号館美術館、2022年1月16日まで)

各館独自の企画による質の高い美術展が年末から年明けにかけて開催される。(陶)