楽しめる「印象派・光の系譜」展
2年に及ぶコロナ禍の中、2021年の美術展は、大きな盛り上がりを欠いたものの、各館とも各館独自の企画を展開、幅広く活動を続けた。新年を迎え、意欲的な展示イベントが予定されている。年初めの美術展で関心を集めている話題作品展を紹介する。
■出品作の中、59点が初来日

『<イスラエル美術館所蔵>「印象派・光の系譜」――モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン~』(写真はポスター)が、三菱一号館美術館(東京・丸の内)で開催されている。印象派の先駆けとなったクールベ、コローをはじめ、同派の中心的作家群であるモネ、ルノワールなどの名品が展示されている。さらにポスト印象派と言われるセザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーガンらの作品も並び、今展では全体で69点が並ぶ。このうち59点が初来日。
特に、有名なクロード・モネの「睡蓮の池」は、連作ものとして愛好家の話題になるが、今回は、“当たり年”といわれる1907年に描かれたもので、本展の見所の中心となっている。またカミーユ・ピサロ「テュイルリー宮庭園、午後の陽光」など傑作ぞろいだ。
会場は、1~4部に分かれ、水と水鏡の反映など印象派が主題としている自然や水の風景が楽しめる。また、都市の情景や人物・静物など幅広い作品が展示され、印象派を中心とする作品を幅広く楽しめる。
イスラエル美術館は、1965年に設立されたイスラエル最大の文化施設。死海写本館やイサム・ノグチによって設計されたビリー・ローズ・ガーデンも有名。先史から現代まで幅広いコレクションを有する。
▷2022年1月16日(日)まで。
■スケール大きい特別展「ポンペイ」

新春、1月14日(金)から東京国立博物館(上野)で開催される特別展「ポンペイ」が、大型遺跡コレクションを展示するイベントとして注目される。イタリア・ナポリ近郊にあったポンペイが紀元79年、ベスビオス山の大噴火で、都市が消滅した悲劇はよく知られている。今展では18世紀からポンペイ遺跡発掘が続けられた成果としての発掘品、フレスコ画や彫像など文化・芸術性の高いものが多数ある。また、館や調理材なども展示され、当時の人々の生活関連史料としても興味を集めそうだ。(写真は展示の一部<辻音楽師 モザイク ナポリ国立考古博物館蔵©Luciano and Marco Pedicini>
同展は、東京会場(2022年1月14日~4月3日)の後、全国3会場を巡回展示する予定。
■「谷崎文学」に登場する女性たちにスポット

「谷崎潤一郎をめぐる人々と着物~事実も小説も奇なり」が弥生美術館(東京・文京区弥生2丁目、東京大学隣接)で開催中(写真はポスター)。「細雪」「痴人の愛」「春琴抄」などの名作を著した文豪・谷崎が描いた作品中のモデル(登場人物)にスポットを当てるというユニークな企画。特に女性を中心とした人間の生き様に着眼。「谷崎文学ワールド」に引き込まれてしまった読者も多い。谷崎自身が私生活の中で体験した女性の姿や生き方に着想した作品も少なくない。
文学と美術というテーマの融合を狙った企画で、展示では「細雪」で雪子が着たとされる着物も注目で、挿絵原画69枚の初公開もある。谷崎作品の愛読者には、興味のある展示だろう。
▷2022年1月5日(水)~23日(日)まで。*後期展示替え
*入館にはオンラインによる事前予約(日時指定)が必要。
<問い合わせ>同美術館 TEL 03(3812)0012 (陶)