「鏑木清方」展、「空也上人展」など…

 全国の美術館、博物館では、新年度入りとともに、新しい企画展や常設展の衣替えなどが始まった。本欄アーツ・ワールドでは、春・秋の芸術鑑賞シーズンの節目ごとに主要イベントを紹介しているが、今回は、首都圏・美術館の企画展を中心にリポートする。

■鏑木の代表作「築地明石町」三部作含め100点以上

没後50年「鏑木清方展」図録の表紙=「築地明石町」(1927年作)より部分

 「没後50年 鏑木清方展」が、東京国立近代美術館(東京・千代田区、北の丸公園)で開催中。美術界の巨匠作品展は、2年を超えるコロナ禍の中、前年の美術展が大きな盛り上がりを欠いたものの、ことしは各館とも独自の企画を展開し、幅広く安定した参加者を集めている。特に日本画の中でも美人画は根強い人気がある。
 今回は、鏑木清方(1878~1972)の代表作109件で構成する大規模なもの。代表作として知られる「築地明石町」(1927年)は、今展では「築地明石町」と合わせて三部作となる「新富町」「浜町河岸」(ともに1930年)が、関心を集める。清方は、浮世系の挿絵画家からスタートしており、美人画の華麗な筆致の中に庶民性が漂っている画風も人気の原因という。明治時代から昭和にかけての清方作品を楽しめる大回顧展。初公開作10点も出展されている。
▷ 5月8日まで

■空也上人の説教の尊さ伝える

 特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が、国立博物館(本館特別室、東京上野)で開かれている(写真はポスター)。阿弥陀信仰を平安中期に広めた空也上人像をはじめ、後に上人が建立した六波羅蜜寺関連の仏像、史料が一堂に展示された。空也上人は、疫病や貧困に苦しむ人々を救うため全国を巡り、説教を続け民間浄土教の始祖とも言われている。没後1050年を迎えての特別公開展。
上人像は、見た目には約1メートルの木像で、やや小ぶりのイメージがあるが、特色は口から飛び出した6体の超小型の阿弥陀仏。作者は鎌倉時代を代表する仏師・運慶の四男・康勝(こうしょう)といわれる。説教の功徳をイメージさせる口出し小阿弥陀というユニークな造型。さらに、顔の表情、骨の浮き出る体格など、迫力ある制作は高い評価を受けている。また六波羅は、平家ゆかりの地だけに「伝平清盛坐像」を見られるのが話題になりそうだ。
▷ 5月8日まで

国内外で依然高い人気の「北斎」

 「大英博物館 北斎」が4月16日から、東京・サントリー美術館(港区赤坂、東京ミッドタウン・ガレリア)で開かれる。大英博物館では、1860年に、初めて葛飾北斎(1760~1849)の作品を購入した。以来、収集を続け、1000点以上の北斎コレクションを所蔵している。世界最大級の規模で、北斎の作品は国内外で高い人気を誇っている。特に、ドガ、ゴッホら印象派へ少なからぬ影響を与えたことなどはよく知られている。
 今回は、約70年に及ぶ北斎の足跡をたどり60歳を過ぎてから90歳に至るまでの約30年間にスポットを当てている。話題性のある「為朝図」や、「富嶽三十六景」シリーズでのダイナミックな富士と大波は、大いに注目されよう。サブタイトルが「国内の肉筆画の名品とともに」(写真はポスター)とあるように、国内外の秀作多数が鑑賞できるのも楽しい。  
▷6月12日まで  

       (陶)