東京交通短期大学(東京都豊島区池袋本町、松岡弘樹学長)の2019年度春学講座「ビジネス倫理」で、カリキュラムの一部に日本経営倫理士協会(ACBEE)の経営倫理士8人が外部講師として参加協力している。4月から7月開催の「ビジネス倫理」講座(全15回、土曜13:10~14:30)は、科目専任教員の大田博樹氏(神奈川大学経済学部准教授・ACBEE理事)が担当している。講座への協力は、今年度で3年目となる。

■社会人になる前に「ビジネス倫理」を学ぶ意義
東京交通短期大学の「ビジネス倫理」講義は、「社会の信頼を得る企業となるために」の副題のもと、経営倫理の基本的な理論を学ぶとともに、事例研究を通じて企業が現在直面している倫理的課題についても学ぶ。将来、自らの職務で倫理的な行動を行うための基礎づくりを目的としている。企業が高い倫理性を保つためには、経営活動に関わる一人一人が、正しい判断を行うことが求められるからだ。
東京交通短期大学は、交通産業関連の分野でリーダーシップを発揮する教養ある専門性を持った人材の育成を教育理念としている。ACBEEは次世代人材を含む幅広い人材に対する経営倫理の啓発を目指し、教育機関との連携にも努めている。
講義の構成は、前半ではコンプライアンスや内部統制、CSRなどの理論を大学教員、公認会計士らが講義形式で学生に伝え、後半部分では経営倫理士が、実務家としての自らの経験に基づいた企業事例を説明し、グループワークによる学生たちの自主研究を促進、サポートする。講座には、約40人の学生が受講している。
■経営倫理士の村瀬講師が「企業理念」をテーマに活発な意見交換を促進
講義の後半部(第9~14講)のグループワークによる自主研究が6月19日からいよいよスタートした。ACBEEの企業倫理士が、実務家の立場から企業の現場で起きている課題について取り上げ、知識を深めるとともに学生に自ら考え、それを議論しまとめる力をつけるよう促す。9回目から11回目までが「経営倫理をいかに浸透させるか」のテーマで、そして12回目からは「経営倫理を軽んじた失敗例の研究」という2つのテーマでビジネス倫理について学ぶ。

村瀬次彦氏(経営倫理士)
第9講の6月19日は、「経営倫理をいかに浸透させるのか」というテーマで村瀬次彦氏(経営倫理士・協和発酵キリンCSR推進部)が担当した=写真=。経営倫理を浸透させるための組織的な対応のあり方という観点から、経営倫理が何を通じて示されているのか、またどのようなことを重視しているのかなどについて解説し、学生目線での課題を提示した。
村瀬講師は、組織における基本的な意思決定の流れを説明した後、企業事例として11年前に2社合併した協和発酵キリンが、どのようにして異なる2社の文化を融合させ、共通の企業価値観を築き上げて行ったかを紹介した。その後、1グループ5人前後でチームを作り、話し合った結果を発表してもらう形式で授業を進めた。村瀬氏に加え、アドバイザーとして3人の経営倫理士が各チームの自主研究のアドバイスなどを行い、学生の研究がスムーズに進むようにサポートした。
同短大の大半の学生が運輸業界に就職を希望するということから、研究課題として「運輸会社は何のために存在するのだろう?」「運輸会社にできることとはどんなことだろう?」「運輸会社の社員の心構えとは何だろう?」という研究課題を示し、グループワークを促した。活発なディスカッション後、学生からは「運輸会社は、人の生活を支える責任を担っている」「安全に、定刻通りにサービスを提供することで、人々に安心を提供している」「地域の発展にも貢献できる存在である」「電車の運転士は、子どもたちの憧れの職業の一つ。夢を与えている」など、テーマの本質に迫る発言が多く交わされた。

◆東京交通短期大学◆ 日本の短期大学制度が発足して2年目の1952年(昭和27年)4月に創立。建学の精神は「質実剛健」。教育理念は交通産業関連分野でリーダーシップを発揮、教養ある専門性を有する人材の育成。国内で唯一、「運輸科」を持つ短期大学。
(リポート:ACBEE編集委員 片方恵子)