「豪雨災害列島におけるリスクマネジメント」

寄稿:平野 琢(九州大学大学院経済学研究院講師 博士)

〇世界有数の雨量の国

 2010年代に入ってから、豪雨に伴う災害報道をよく見る。2018年7月に発生した西日本における集中豪雨では、広島県、岡山県、愛媛県を中心に大規模な土砂災害や浸水が発生した。また、九州北部では2018年と2019年の2年連続して豪雨災害が発生した。この他にも東北豪雨など、毎年のように豪雨災害が日本において発生しており、日本は豪雨災害列島と化している印象を受ける。
 そもそも、日本は世界有数の雨量で知られる国であり、豪雨を含む水災害への対策を長年にわたり行ってきた。結果として、持続的に高度化されてきたハード・ソフト両面の水害対策が各地に存在する。それにもかかわらず、なぜ現在においてもなお、これほどまでに水災害によって大きな被害を受けるのであろうか。最近の豪雨災害の現状と見えてきた課題、そして水災害に対してあるべき姿勢について考察したい。
 

〇浸水域の減少の半面で被害総額は急上昇[1]

  浸水した家屋や水没した自動車などを映したニュースをテレビなどで頻繁にみると、日本では非常に水害が増えたような感覚にとらわれる。実際はどうなのであろうか。国土交通省が公開しているデータ(水害統計調査:過去20年間水害被害発生水系・沿岸数)を見ると、水害の発生件数が近年著しく増加しているとはいいがたい。また、伊勢湾台風や狩野川台風など、過去の洪水をきっかけとして様々な治水工事が行われた結果として、水害における…

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