「経営倫理士」700人突破の実績

第24期オンライン修了式で挨拶する潜道理事長

 NPO法人日本経営倫理士協会(ACBEE JAPAN 潜道文子理事長)の「経営倫理士講座」での資格取得者が700人を突破した。第24期講座(2020年5〜11月)の修了式が11月18日に行われ、新経営倫理士が誕生し、総合計716名に達した。発足以来23年目での実績が注目されている。コロナシフト下で企業社会が混迷、ビジネスのあり方が大きな課題になる中、新時代の「即戦力型の資格」として関心が高まっている。 =関連記事「第24期修了式」

経営倫理の視点で捉えたビジネス人生

 ACBEEは1997年10月、前身の経営倫理実践普及協議会(任意団体)として発足、2009年にNPO法人日本経営倫理士協会となった。
 協会のミッションは「経営倫理のスペシャリストを育成し、活動を支援する」。2014年以降、中期経営計画(5年単位)を策定、運用。現在、第2次中計の段階に入っている。

 本講座は、経営倫理の理論研究・実践ノウハウを総合的に体系づけて学べる日本で唯一の資格取得講座。第1期生の明石雅史さん(明石広報事務所代表)は「危機管理を広報面だけでなく、企業倫理の視点で捉えられたことは経営倫理士として研鑽の結果であり、これが私の人生を支えてくれた精神的支柱といっても過言ではない」と述べている(日本経営倫理士協会 20周年記念誌より)。発足時の講座に参加して、資格取得したことへの大切さを振り返っている。

 ACBEE講座への評価の高いことは、出講する講師諸先生が各分野の専門家である点だ。資格講座以外でも、シンポジウムや研究会、コラム寄稿などで協力。また、コンサルティングや企業内研修への派遣活動にも参加している。

企業不祥事は悪質化している…

 国内外での企業不正、不祥事は後を絶たない。その原因・背景は多様なケースがあり、予想外の事例もある。不祥事をなくすことは出来ないのか―。「不祥事を0(ゼロ)にするのは難しいが、0に近づけることは可能である―」。これこそが不祥事対応の原点となる考え方だ。
 コロナ禍の拡大が止まらぬ中で、企業不祥事はむしろ悪質化しているという報道が続いている。コロナシフト下のビジネス社会では、組織と人の動きが激変した。教育研修・資格取得のジャンルでも変革を迫られている。この変革過程でACBEEも事業内容とシステムの改革を進めている。コロナシフト対応を新たな改革の道程と見据えている。
 主な特色は―。

  1. 副業や転職の際に活用できる「資格」
    働き方改革が全産業で進行し、社員に副業を認める企業が増えている。また労働人口の流動化、新ビジネスの誕生などで転職を考えるケースも出始めている。その時、実際に役立つ資格として経営倫理士はビジネス・パーソンから注目されている。
  2. 「短期間」で期待できる「集中講座」
    公認会計士などの国家資格の取得は、かなりの月日が必要とも言われる。経営倫理士は短期集中型(約半年間)のオンライン受講で修了(8月は夏休み)、資格取得が可能となる。
    経営倫理は幅広いテーマを包含しているが、課題を絞り、重点的にハイレベルの知識、ノウハウを身につける一生役立つ内容を短期集中して修得できることでメリットは大きい。
  3. 「即戦力」としてプロを育成
    本資格が注目されるのは「即戦力」として役立つこと。目立つケースでは、異動で着任する新任の経営倫理担当者にも早期に業務に取り組んでほしい―という要請がある。また最近では、3〜5人程度の集団型受講も出ている。経営倫理系の社員研修は、専門機関であるACBEEでの教育コースに…、という方針だ。

 コロナシフト下のビジネス界では、混迷が続き、その対策に官民あげて取り組んでいる。経営倫理という専門領域が重要性を増しつつある時だけに、新時代に「強い資格と専門教育」が求められている。ACBEEもハイレベルの民間認定資格として活動を続けなければならない。

広報・宣伝力、さらに充実を…

 「700人突破…」に至るまでには発足以来のダイヤモンド社はじめ、日本経営倫理学会(JABES)、経営倫理実践研究センター(BERC)との連携など、関連組織の強いバックアップがあった。1990年代後半、ACBEE等の3組織を創立した水谷雅一氏(元神奈川大学名誉教授)の功績は大きい。「700人突破…」まで23年間経過しているが、諸先輩、関係者の協力・支援は大きな力となっている。今後はさらに講座内容の検討・改編、講師陣の充実を図るなど着実に実績を上げていく。

 一方、ACBEEという組織活動について、広報不足を指摘する声はある。また『「経営倫理士」について知らない人がかなりいる。PRは浸透していない…』との指摘も出ている。
 現在ホームページをはじめ、シンポジウムなど多様な活動で情報発信を続けているが、今後さらに強化、充実させる必要が求められている。