2021年9月22日、経営倫理士総合研究会・発表会が開かれた。オンライン方式(zoom)で、18:00〜20:00の2時間に経営倫理士2人が約1時間ずつ発表講演した。
初の発表講演会だけに注目され、申し込み予約段階で約60人が参加。当日、開会直前まで申し込みが続いた。参加費は無料。
当日の発表公演は内田英良(朝日新聞社、第22期生)と、渡邊潔(サカタのタネ、第23期生)の両氏。
朝日は、なぜSDGsに注目したか…

内田氏のテーマは「SDGsと経営倫理」。メディア大手の朝日新聞社が、なぜSDGsに注目したのかーから説き起こし、具体的に説明していった。同社は2014年に記事の取り消しなどで社会や読者の信頼を大きく損なうという不祥事を起こした。その後、信頼回復と再生のための行動計画を発表。その中で、課題を共有し多角的な視点で解決策を探るメディアになるーと宣言。
地球規模での課題解決を目指すSDGsは行動計画と合致していた。全社的なSDGsを発信する取り組みが始まり、内田氏もメンバーの1人として参加した。その中で企業はどのようにSDGsに向き合えばいいのかを考えさせられた、と話した。またSDGsがビジネス発想を変えていくことや、経営倫理とつながりがあることを強調した。
〝今、そこにある危機〟を回避

渡邊氏は「組織における管理者、実務者それぞれのコンプライアンス推進の留意点」のテーマで発表した。管理者が、それぞれの立場でコンプライアンス経営の実現、強化につながるよう重点項目を挙げて解説した。
今回の発表会には、企業の実務担当者や管理責任者が多いと考え、組織としてコンプライアンス推進の基本にアプローチ。特に企業が直面するであろう〝今そこにある危機〟を回避するためにも、より実務に近い視点で心得ておくべき点についても解いた。
異業種分析の切り口、参考に
視聴者から寄せられた感想は以下の通り…
内田氏発表については「私は広報経験20年以上ですが、朝日新聞さん自体にこのような一面があることに正直、驚かされました。丁寧で分かりやすい説明でした」「大変興味深く拝聴。SDGsの発想は、アウトサイドイン…まさしくその通りだと感じた。異業種分析の切り口も参考になった」。
また渡邊氏の発表に対しては「コンプライアンス研修には、受講者共通の悩みがある。なかなか浸透しない。頭で理解していても業務に結びつかない」「研修開発論の中でいわれる研修転移の壁ということか。渡邊さんの解説はヒントになる。」との声が寄せられた。
業務の中での視点や課題究明
今回の経営倫理士総合研究会・発表会は第1回ということで注目されていた。ACBEEでは発足して23年間で750人の資格取得者が誕生している。企業のコンプライアンス部門を中心に活動中。
一方、資格取得者の増加に伴い、アフターケアが重要課題になっていた。総合研究会のスタートは、ACBEE特別戦略会議で企画、検討を重ねて実現した。特別戦略会議が中心になる自主的運営が特色となっている。
初めての企画だけに注目されたが、今回評価された理由は、経営倫理士として堅実な発表姿勢や、ACBEE独自の情報発信が評価されたものだ。ノウハウ本や著名講演者の引用でなく、発表者が担当業務の実績を積む中での視点や、課題究明が評価された。