1位「東京五輪汚職」、2位「知床観光船沈没」が突出

ACBEE「2022不祥事動向調査(ワースト10)」発表

ACBEE不祥事動向調査は、13年間続く年末アンケート。回答者が経営倫理士に限定された独自調査。企業不祥事全般などを対象とした調査で、正確性・公平性・客観性・人権配慮などを重視。ACBEEコンプライアンス動向調査の評価は高く、毎年発表経過に関心が集まっている。

■2022不祥事動向(ワースト10) アンケート調査回答状況

  • 主たるアンケート回答者:経営倫理士
  • アンケート実施期間:2022年12月26日~2023年1月8日
  • 回答対象案件:「経営倫理フォーラム」等で報道したデータ・案件からACBEE編集部が40事案(2022年)をリスト化
  • 配信件数:430件
  • 回答件数:110件
  • 回答率 :26%

■2022年不祥事動向・速報

                         (集計2023/1/9:回答件数上位10件

ACBEEの2022年「不祥事アンケート(ワースト10)」結果は、1位「東京五輪汚職」、2位「知床観光船」が、他のアンケート回答指摘の中で、突出した数字となった。
1位は、東京五輪のスポンサー選定をめぐる受託収賄事件。電通元専務で組織委員会元理事の高橋治之容疑者が、東京地検特捜部に逮捕・起訴された。経営する会社などを通じて、AOKIホールディングスとKADOKAWAから多額の賄賂を受け取ったとされる。さらに大広からも賄賂を受け取った容疑で逮捕された。巨額の税金が投入されるオリンピック・パラリンピックでは、公共性確保やコンプライアンスの徹底が求められるが、組織委員会のチェック体制がずさんだった。大規模イベントの業者選定が、ノウハウにたけた電通頼みにならざるを得ない実態も明るみに出て、事件の背景として指摘された。
2位「知床観光船沈没」は、死者・行方不明26人という、大変痛ましい事故となった。①前年に2度の座礁衝突事故②出港判断の記録不備③航路の大半がエリア外となる携帯電話へ、衛星電話からの変更④運行管理者の社長が事故当日に事務所不在―などの実態が次々と明らかになった。社長が初めて会見したのが発生から5日目だったことや、他人事のような発言に批判が殺到した。
3位は「三菱電機、変圧器でも品質不正」。同社はここ数年、このランキングの〝常連〟のように取り上げられ、22年4月に品質不正の再発防止策として、組織改革の指針となる「骨太の方針」を発表したばかりだった。その後の徹底した調査で合計197件の不適切事案が確認された。
4位「安倍晋三元首相銃撃死」は、参院選の街頭演説中の安倍元首相が白昼、男に銃で撃たれ死亡。国民に大きな衝撃を与えた。容疑者の男が供述した動機内容が契機となり、宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧・世界基督統一神霊教会)と政治のつながりが問題視され、政界を揺るがせたほか、被害者救済の機運が高まり、新たな法律も成立した。
同率4位の「かっぱ寿司による営業秘密不正取得事件」では、逮捕された社長が、前に働いていた「はま寿司」と自社商品の原価を比較する資料を作成するなど、組織的にデータを利用した疑いがある。ランクには入らなかったが、この業界では「スシロー」のおとり広告も露呈し、不祥事の背景に競争の激しさをうかがわせた。
6位は「SMBC日興による相場操縦事件」。株価を維持する目的で不正な取引を繰り返したとして、同社の専務執行役員ら4人が東京地検特捜部に金融商品取引法違反容疑で逮捕された。大手証券が同容疑で刑事責任を問われるのは、極めて異例。
7位は「吉野家常務の不適切発言」。同社常務が、大学の社会人向け講座で「田舎から出て来た右も左も分からない女の子を生娘のうちにシャブ(薬物)漬けにする」と発言。人権やジェンダー問題が指摘された。講座参加者のSNS投稿から批判が広がった点でも特筆される。
以下、8位「電通など共同企業体が談合」、9位「日野自動車、エンジンの検査不正常態化」、10位「陸上自衛隊セクハラ・性暴力事件」、10位「熊本県産アサリの産地偽装」と続く。

今回のランキングでは、「かっぱ寿司」「SMBC日興」「吉野家」など、本来、コンプライアンスやガバナンスを主導すべき大企業の幹部による不祥事が相次いだ。

ACBEEの今回の調査では、10年以上のコンプライアンス動向を把握することも出来る。2022年の調査分析を踏まえて指摘できる傾向は、①不祥事案件が大型化、悪質化している②不祥事発生企業の対象が広がっており、多業種にまたがっている③不祥事企業の基本経営姿勢、ガバナンスへの指摘が多かった④例年指摘されているが、リスクマネージメントとしての説明責任・情報公開、その公明性が強く問われている。

ACBEE編集委員会・経営倫理フォーラム事務局

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