千賀 瑛一 日本経営倫理士協会専務理事
(日本記者クラブ会員)
4月7日に始まった新型コロナウイルスの感染拡大に伴う 緊急事態宣言が、5月26日、 1カ月半ぶりに ついに解除された。さまざまな出口戦略が既に議論され始めていたが、宣言解除後の見通し、展望は、どの分野でも不透明なままだ。暮らし方、働き方が激変するといわれる中で産業界でも深刻な状況が出現している。今年の企業倒産件数の拡大が始まり、1万件を超すという見通しが発表され、注目されている。
■ アパレル大手レナウンが経営破綻

5月15日、日本記者クラブで「新型コロナの影響と企業活動」のテーマで、帝国データバンク東京支店・赤間裕弥情報部長が会見した(写真上)。
同日、アパレル大手のレナウン(東京)が民事再生法の手続きに入った。新型コロナウイルスによるデパート休業の影響や資金繰り悪化などが響いたものとみられているが、国内上場企業の経営破綻は今年初めて。コロナ倒産が大企業にも及び始めた。
赤間部長は会見で「国内倒産件数(5月15日時点)は、2013年以来、7年ぶりに1万件ラインを超す見通し(負債額1千万円以上、法的整理)」と話した。廃業・休業も増加し、先の見えない長期戦に入った。雇用に大きく響いてくることを強調した。
■ 大都市圏に集中、“倍々型”で倒産急増中
今年に入っての倒産件数は2849件。内訳をみると5月15日時点で152件。 さかのぼると 2月2件、3月26件、4月95件で、いわゆる“倍々型”で急増しているという危険パターンを見せた。法的整理としての扱いは、破産、民事再生法の手続きと、さらに事業停止を合わせたものが対象。
最近の状況では、東京・大阪などの大都市圏に集中、事業別ではサービス業53件(うちホテル、旅館が34件で最多)、小売業41件などのデータを示した。これらのデータ説明とともに、運転資金調達などに苦しんでいる背景を分析した。
今後は、製造業、卸売業、小売業への倒産のリスクが高まる可能性も指摘した。また、同部長によるとドイツでは、破産申し立て手続き等を受け付けないとの情報もある、と話している。
■ 解雇、雇い止めが1万人以上に(厚労省)

企業倒産のあおりで、コロナ不況が深刻化した場合、最も顕著な動きが出てくるのが雇用への影響だ。
「コロナ関連の解雇や雇い止めは5月21日 時点で、2月からの累計1万835人に上っている」。 加藤勝信厚生労働大臣 は22日、記者会見で 雇用情勢の急速な悪化を明らかにした(写真下)。同省では2月から解雇や雇い止めについて、見込み分も含め各都道府県労働局を通じて集計している。2月が282人、3月が835人、4月は2654人で、政府が緊急事態宣言を発令した4月から急増し、5月だけで全体の7割近い7064人となった。
対応についての記者の質問に対し、加藤厚労相は事業主に対し雇用維持を強力に支援していくため、雇用調整助成金の引き上げやハローワーク人員体制の拡充などを図っていくことを強調、リアルタイムで状況を把握し、積極的に雇用維持の働きかけを行っていくと強調した。
倒産件数の見通しが1万件以上とみられることや、解雇・雇い止めが既に1万人以上になっていることなどによって「コロナ後」の企業経営の立て直しの難しさが強くクローズアップされた。