助言組織の「廃止」と「新設」の動きから
千賀 瑛一 日本経営倫理士協会専務理事
(日本記者クラブ会員)
政府は6月24日、新型コロナウイルス対策のために設けられた専門家会議(座長 脇田隆字・国立感染症研究所所長)を廃止すると発表した。これに伴い、新組織として特措法に基づく会議体「新型コロナウイルス感染症対策分科会(仮称)」を発足させる。同日、西村康稔経済財政・再生相が発表した。
一方、同日、専門家会議の幹部ら3人が、日本記者クラブ(東京)で会見、コロナウイルスに関連する一連の動きを総括、さらなる感染拡大に取り組む「リスクコミュニケーション」のあり方などについて提言した。
■ 重要なリスクコミュニケーション
西村経済財政・再生相は新組織について、感染防止と社会経済の両立を図る必要があるとして、感染症専門家以外に、自治体関係者や情報発信の専門家らを加える、と説明した。専門家会議は新型コロナ対応の改正特措法が成立する前の2月14日に発足、法的根拠はなかった。西村氏は同会議について「位置づけが不安定だった」としている。新組織は新型インフルエンザ対策閣僚会議のもとにある有識者会議に分科会として設ける。7月上旬に初会合を開く予定という。
今回廃止となった専門家会議は、クルーズ船での集団感染対応など汚染被害が一気に広がり始めた2月、感染症や公衆衛生の専門家ら12人による構成で発足。同会議は、政府の対策本部に対して、新型コロナウイルス対策で医学的見地から助言などを行うことを目的で設置された。
■ “同時会見”がメディアの関心集める

左から尾身茂副座長、脇田隆字座長、岡部信彦構成員=24日、日本記者クラブで。
24日の双方の会見は、西村経済財政・再生相と、専門家会議幹部3人による“同時会見”という形になり、メディアの関心を集めた。25日の報道では、「専門家会議は発足当初から、政府とのズレが…」「積極的発言は、踏み込みすぎ…」などの表現で、同会議の“前のめり姿勢”について解説している。これらメディア論調の多くは、同会議が権限や責任が曖昧なまま積極的な発言をし、これが時には批判も生み出したことなどを指摘。脇田座長も「政府の諮問に応えるだけでなく、対策をとる必要がある」と話している。
また、「医学的見地からの助言が政策を決定するというイメージが作られてしまった」とも述べた。
■ 審議会などの会議手法にも“一石”
現在、国や自治体の企画・事業などについては、審議会や有識者会議などでチェックされる方式が一般的だ。行政の一方的な企画・執行に歯止めをかけ、幅広く市民の意見を反映させるのが目的。審議会の会議手法や意見集約も、いわゆる“お仕着せ型”で、行政サイドのまとめた流れに沿ったものが多い、という。今回、専門家会議が積極的な発言を示したケースは、むしろ注目される姿勢といえる。
24日、会見した脇田座長は、「専門家会議の4ヵ月を振り返って、助言組織のあり方、その課題について政府に提言した」と述べた。今回の助言組織の廃止と新設は、医学と政治のあり方、双方の権限や責任をあいまいにしない―など、重要課題を投げかけた。特に首都圏の感染者数高止まり現象や、世界的な第2波被害への懸念など、状況が深刻化する中での問題提起となった。