千賀 瑛一 日本経営倫理士協会専務理事
(日本記者クラブ会員)
パートやアルバイトで働く女性を対象に行った調査によると、コロナ禍で収入が大幅に減ったものの公的支援が受けられず生活困窮者が急増している実態が明らかになった。
1月21日、日本記者クラブで野村総合研究所が会見、発表した。仕事が5割以上減り、休業手当も受けていない、いわゆる「実質的失業者」は約90万人と推計されている(2020年12月)。
問題なのは「休業手当」があることを知っているのは2割に過ぎず、公的支援からこぼれ落ち、社会的弱者が限界にきている状況だ。主要日刊紙などでも報道され、政府は急遽、パート・アルバイト等を対象に休業支援金拡大の方針を打ち出した。

=1月21日 日本記者クラブ会見オンライン開催
今回の調査は、同総研が2020年12月、パートやアルバイトで働く20〜59歳の女性5万5889人を対象に実施した(インターネット・アンケート方式)。21日の会見では、調査を担当した野村総研未来開発センターの梅屋眞一郎・制度戦略研究室長、武田佳奈・上級コンサルタントが発表した。
◆シフト制で厳しい年収に追い討ち…
調査の前提として、「シフト制度就労下にあるパート・アルバイトの女性」が対象で、働く日数や時間帯など業務量をシフト化して調整されている。今回の調査では新型コロナの影響を強く受け、シフト就労が5割以上減ったとする人が約10%以上にのぼっている。さらにその中の4人に3人は休業手当を受けていなかった。同総研では、データで判明した実態として”実質的失業者“の調査分析をすすめた。コロナ禍以前でも実質的失業者の世帯年収は全体の6割が400万円未満で、コロナ後には世帯年収が半減したとするケースが5割近くに上がっているという。
企業側の事情で休業する場合、休業手当を労働者に支払う事が労働基準法で義務づけられている。平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならない。
国は、企業に雇用調整助成金による支援などを行なっている。同手当の対象はシフト減により減収したパート・アルバイトを含む。調査では、シフト減のパート・アルバイト女性で、自分が支給対象であることを知っていたのは2割だった。さらに、「休業支援金・給付金」を知っている調査対象者は1割強で、その9割近くが申請していなかった。「自分が申請できるかどうか分からなかった」という理由が多い。
◆シフト就労下の女性たちは孤立
休業手当をはじめ関連する雇用調整助成金、休業支援金・助成金をはじめ、生活保護のための窓口など国や自治体による支援策はある。しかし、今回、調査対象者のように制度そのものや、制度の利用法など周知徹底が及ばず深刻な状況となっている。特に、シフト下での就労者は、飲食・サービス業で働くケースが多く、コロナ禍の影響を大きく受けていることが明確になった。

発表した武田さんは、「パート・アルバイトで働いている女性たちが、支援から孤立していることが改めてわかった」。また、梅屋さんは「今回の調査はシフト下で働く人たちの実態を究明するのが目的。収入が減り、困窮したのに声を上げていない人々に制度が利用されるようにしなければ…」と話している。