五輪「やるなら無観客」、都医師会長

千賀 瑛一  日本経営倫理士協会専務理事
(日本記者クラブ会員)

 東京五輪・パラリンピックが開幕まで2ヶ月を切るという切迫した状況下で、東京都医師会・尾崎治夫会長が8日の記者会見で、「やるとすれば無観客しかない」と発言した。さらに「新型コロナの感染状況によるが、中止という選択肢もありうる」とも述べた。

尾﨑治夫・東京都医師会会長(写真下も) 日本記者クラブ会見<オンライン開催>=5月27日

◆選手以外の感染対策に不安も… 

 尾崎会長は、5月27日、日本記者クラブでも会見。この時は、政府が第4波に対応して緊急事態宣言の延長を決める前日と言う緊迫した会見だった。「五輪・パラリンピックについて、今の状況なら無観客の開催が最低限の話ではないか。観客も必要かな…という考えでは安全な五輪は出来ない」と主張。尾崎会長は終始一貫して「今のままなら無観客」を訴えている。
 さらに参加国の中にはワクチン接種が進んでいない所もある。スポンサーやメディア関係者の感染対策は、選手ほど厳しくできないところも見られる。とも指摘している。

◆地域医療を代表する立場での発言

 今夏の東京五輪について、政府、大会関係者、専門家らによる激しい議論が続いている。新型コロナの影響を考え、開会式まで2ヶ月を切ったという迫った状況で「有観客」か「無観客」かの議論が続き大きく揺れ動いている。特にワクチン接種の拡がりに伴う期待感が膨らみ、これまで「無観客」の意見が強かったが「有観客」主張も勢いを増している。
 橋本聖子・大会組織委員会会長は、この「有観客」「無観客」問題に「6月中に方針を公表する」としている。組織委員会や政府の一部にある「有観客」を主張する根拠には、Jリーグやプロ野球等の観客対応に準じた形の開催をーの意見がある。
 これに対し、専門家からは観客を入れれば入の流動量が増え、感染拡大のリスクが高まる。と強く指摘している。政府分科会委員や、公衆衛生の担当官らが、それぞれの専門的視点から発言している。東京都医師会が地域の第一線で、活動を続けている現場組織だけに、尾崎・同医師会会長の意見はさまざまな発言の中で特に注目される。