有罪確定後、「犯罪会計学」を提唱・構築

『会計と犯罪』著者・細野祐二氏が会見

 最近話題となっている『会計と犯罪-郵便不正から日産ゴーン事件まで』の著者・細野祐二氏の記者会見が、2019年8月2日、日本記者クラブ(東京・千代田区内幸町)であった=写真。細野氏は現在、会計評論家。1982年に公認会計士登録、2004年に顧客企業の株価操縦事件で逮捕・起訴され、無罪を主張したが、上告棄却で有罪が確定した(一審東京地裁 懲役2年執行猶予4年)。現在は、企業コンサルタントとして、また犯罪会計学研究を続け、その必要性を強く提唱、注目されている。

■東京地検特捜に逮捕・起訴され、一貫して無罪主張

 オリンパスや東芝の粉飾決算事件はじめ、日産ゴーン事件の端緒となった有価証券報告書偽造記載など「会計と犯罪」の重大性は、経営倫理、コンプライアンスの根幹に関わるテーマとされる。
 細野氏は、会見では、04年3月、東京地検特捜部により逮捕され、経済事件の渦中に投げ込まれた時の苦しい体験などを話した。同氏は、一貫して無実を主張したが、上告棄却された。自身の有罪確定までの経過を踏まえ、経済犯罪の捜査と審理の問題点を指摘した。

■村木元局長「無罪」との比較では…

 細野氏が有罪確定したのとほぼ同じ時期、郵便不正事件で厚労省の村木厚子元局長が無罪となっており、著書『会計と犯罪』では、「この2人の判決の差は何か―」と問題提起している。現行の経済司法の問題点については、捜査と起訴の2権を併有する特捜検察のあり方を問題視している。特に村木元局長事件であぶり出された特捜検察による冤罪構造の究明は、注目される。
 日産ゴーン事件についても多角的に検証を進めて、独自の視点で、「会計と犯罪」の深奥に切り込んでいる。エンロン、東芝、日産…などと続いた大型不祥事と犯罪会計の関連を考えた場合、社会性ある企業行動と倫理が求められている。

『会計と犯罪―郵便不正から日産ゴーン事件まで』 細野祐二著 岩波書店発行 定価(本体1,800円+税)