第23期講座を修了し延べ693名を輩出
企業のコンプライアンスへの取り組みの重要性が一層増す中、2019年5月からスタートした日本経営倫理士協会(ACBEE)が主催する第23期「経営倫理士」資格取得講座が、11月11日の修了式・認定書授与式をもって修了した。今期の修了生は、メーカー、商社、ソフトウエア、小売など多岐にわたる業界から、企業のコンプライアンスやCSR業務などを担う社会人、計29名であった。会場は、ワイム貸会議室(丸正総本店ビル6F、東京都新宿区四谷)で行われた。
■幅広いカリキュラムをこなして
「経営倫理士」の資格取得には、約半年間にわたる全18講座の受講、全2回の小論文形式のリポート提出、さらに最終筆記試験と面接試験合格が要件となっている。講座では、学術、産業、行政など幅広い分野から一流講師陣による、経営倫理の理論や重要視される社会的背景に関する講義から始まり、コンプライアンス、CSR、内部監査、情報セキュリティ、ダイバーシティ、ハラスメント防止など幅広いカリキュラムが網羅された。
講座受講を通じて、コンプライアンス、リスク管理、CSRをはじめとした多様な経営課題に、即応・解決する能力を身に着ける。このたび誕生した29名への認定書授与をもって、これまで693名の経営倫理士が誕生したことになる。
■エールを送り理論と実体験習得に感謝の言葉

修了式では日本経営倫理士協会の千賀瑛一専務理事が、「皆さまが、無事今日を迎えられ、大変うれしい。企業で日々実務を重ね、本講座で講師陣からの様々な講義や課題を通して学んだ今、皆さまはすでに経営倫理のプロフェッショナルであり、もう卵ではない。近い将来、多くの職業がAIに取って代わられると言われている昨今、就職活動を迎える大学生の希望職業に、『コンサルタント』が躍り出ているという。皆さまは今、経営倫理のコンサルタントとしての力を身に着けた。今後も自信をもって大いに活躍していただきたい」と祝辞を述べた。なお、今期新理事長に就任して最初の修了生を送り出した潜道文子理事長は、大学講義と重複したため修了式への出席は叶わなかったが、修了生への祝電で、多忙な業務の最中7カ月間にもわたる受講や試験合格に対する尽力を称え、エールを送った。
修了生代表は、講師陣をはじめとした関係者へのお礼の言葉に続いて、「本講座について受講者それぞれ様々な感想をお持ちだと思うが、自分は主に次の3つを習得できた。初めに、17名の先生方の生の実体験を多様な視点から学べた。続いて、ディスカッションを通じて受講者各々の経験や意見を聞けた。最後に、あわただしく日々が過ぎていく中、受講時間やその通学に充てる時間にじっくりと経営倫理について考えることができた。同期の皆さまと引き続き交流していきたい」と答辞を述べた。
最後に、津田登理事が「組織内のコンプライアンス事案の対応は難しいことを、自分も実務を通して体験してきている。皆さまが、今後仕事で困ったことがあったら連絡してほしい。常に『愛情と好奇心』をもって活躍していただきたい」とエールを送り、修了式を締めくくった。
最後に司会進行を務めた村瀬次彦プロジェクト・プランナーが、事務局とOBとなる経営倫理士第21期生を代表し、経営倫理士としての今後の活動や、同期の修了生が自主的に継続している特別研究会などを紹介した。
■親睦交流会での修了生の声
式終了後に開催された親睦交流会では、講師陣のひとりであった、九州大学大学院経済学研究院講師の平野琢氏より「欧米のリスクマネジメントの実務家と話した際、日本は経験則に基づいたレベルの高い実践が行われているが、論理的思考やフレームワークに即した工程については、まだ向上の余地がみられるようだとの話があった。本日修了を迎えた実務家である皆さんが、本講座で理論もしっかりと身に着けたので、理論と実践を兼ね備えた専門家となられたことを嬉しく思う」と祝辞を送った。
続いて修了生によるショートスピーチでは、次のような感想が述べられた。「普段社内からの内部通報を受けた場合、判断に困ることが多々ある。受講によって、学習した理論が納得できて日々の判断時のベクトルが強くなったと感じている」(製薬会社、法務・コンプライアンス部門所属)。
「社内アンケートの結果、社員から『コンプライアンスについてもっと理解したい、教育してほしい』という声があり、うれしい驚きであった。このあと、会社で学んだことを社内研修にも生かしたい」(メーカー、コンプライアンス推進部)。
「法務部に配属になって間もないため、知識も限られている中の参加であった。ディスカッションを通じて受講生の皆さんが考えていることなどを聞けて、非常に有意義であった。社内に既に経営倫理士の資格取得者が複数いるので社内勉強会や情報交換会を開催したい」(メーカー、法務部)。
「営業が強い立場にある組織において、これまでコンプライアンスは後回しであった。しかし、コンプライアンス向上によって企業力を高められることを学べたため、現場のブレーキでなくアクセルとしての企業倫理を推進していきたい」(小売、内部監査室)。
また、「異業種の仲間ができたことがうれしかった」「修了後も交流を続けたい」などといった感想が多数聞かれた。
(リポート:ACBEE編集委員 片方 恵子)