ドコモ完全子会社化で注目 NTT澤田社長が会見

 日本電信電話株式会社(NTT)の澤田純代表取締役社長の記者会見が2月19日、日本記者クラブで開かれた(=写真)。昨年、NTTによるドコモの完全子会社化が発表され、合併統合関連のビックニュースとして高い関心を集めていた。
 3日1日には、ドコモのahamo新料金値下げ発表もあり、携帯事業各社の競争は一気に激しさを増す状況だけにNTT社長会見は注目された。 19日会見では、澤田社長はドコモの料金設定はドコモが決めるとして、NTTは持ち株会社としての立場であることなどを強調した。澤田社長は土木工学の出身だけあって、現場育ちのエンジニア精神に溢れた堅実な口調の会見だった。

次世代ネットワーク構想など説明

 いま、注目されている「働き方改革」についてはアフターコロナ社会のトレンドとして2点を指摘した。
①「ソーシャルディスタンスの確保」に対する、「経済活動の活発化」という対立的な課題については「リモートワールド」(分散型社会)の実現を目指す。
②グローバリズム(人、物、金の移動や広範でフリーな資本主義)と、ローカリズム(人、物、金の活動制限、国家主義、民族主義、多政学、異文化)を合体集約的にした「ニューグローカリズム」を実現すべきと話した。
 NTTの目指す方向性としては、
(イ)リモートワールドを考慮した新サービスの展開・提供
(ロ)リソースの集中とDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進
(ハ)世界規模での研究開発の推進 ―などをあげた。

NTTの澤田純社長 
本記者クラブ オンライン会見から

 NTTドコモの完全子会社の目的について強調したのは、国内競争・ボーダーレス競争になんとしてでも打ち勝つために、ドコモの強化・成長が不可欠であり、これがグループ全体の発展・強化につながっていくとした。
会見では、NTTが進める「次世代ネットワーク構想(IOWN)」の説明に力点置かれた。特にコロナ禍によるリモート社会への転換を「ゲームチェンジ」と表現、自立した日本のあり方を説明した。
大容量データへの対応としては通信能力とコンピューティング能力の向上を指摘。具体的なケースとして、オールフォトニクス・ネットワークを説明した。スポーツイベントなどの際、スタジアム内外に分散して観戦する観客の一体感を醸成できるという。

 また社会の環境負荷低減についても言及した。テレワークの導入の導入により、二酸化炭素排出量は70%削減可能だと説明。特にオフィス勤務から在宅勤務への切り替えによって移動エネルギーの大幅削減に注目している。これに関連してエネルギーの地産地消の実現をも訴えた。
 さらにNTTとしてエネルギー分野に取り組む革新的な技術の創出を目指す「宇宙環境エネルギー研究所」の新設についても説明した。また地球エネルギー系と切り離された〝宇宙データセンター〟の構想実現に際しても国際的に協力していきたい、としている。

中途採用などで人材開発も

 会見後の質問では通信事業の人材開発に関する発言もあった。澤田社長は「スペシャリストとして能力やスキルと賃金(報酬)を考える必要がある。さらには賃金だけでなく、やりたい研究テーマや作業環境への配慮も重要。容れ物を用意するだけでなく、途中採用も活かして人材を確保する必要があるだろう」と経営トップとして人事マネジメントにも触れた。
 3月1日には、ヤフーとLINEが経営統合。AI(人口知能)分野に集中的に投資するなど新たなサービスの開発をする方針。今回のNTTのようにグループの強化、巨大化が進む一方、ヤフーなど大型プラットフォーマーによる経営統合も出現、通信やAI事業の大型編成は、さらに進むとみられている。

(千)