千賀 瑛一 日本経営倫理士協会専務理事
(日本記者クラブ会員)
片野坂・経団連副会長が会見

日本記者クラブ会見=3月17日
日本の“産業セキュリティ法制化”がついに動き出した。「ロシア侵攻」が、一気に世界の目を集めてしまったが、岸田政権が制度化を目指す「経済安全保障推進法案」は、今年最も重視されていた。同法案は2022年3月12日衆議院本会議で審議入りした。同日、法案の対象である経済界を代表する形で、日本経団連副会長・片野坂真哉氏(ANAホールディングス代表取締役社長)が日本記者クラブで会見した。
法案の骨子は、①特許の公開制度、②国内供給網(サプライチェーン)の強化、③先端技術の技術開発支援、④重要インフラの安全確保―の4本柱。サプライチェーンの強靭化をはじめ、企業に情報管理の強化を促し、軍事的に転用可能な技術の特許などを非公開とする狙いもある。安全確保に必要とされる物品を「特定重要物資」とする案も盛り込まれている。
企業の自由な経済活動を維持
17日の会見に先立ち、2月9日片野坂真哉副会長ら経団連幹部が内閣府で小林鷹之経済安全保障相と面会した。片野坂副会長は、今国会に提出する同推進法案に関する意見書を提出、推進法案は必要だと明記しつつも、企業が事業活動を自由に展開できる環境を維持・改善することの必要性を訴えている。片野坂副会長は小林大臣に推進法提出を支持するとし、国際ルールとの整合性にも配慮し、経済界の考えも反映してほしい、と要望している。。

日本記者クラブでの会見で片野坂副会長は法案に対する経団連の評価を報告した。「基本的な考え方」はじめ「制度の対象」「支援の対象」「補償」など幅広い項目の評価結果を公開した。
また同副会長は経済安保について、日本は欧米に比べて遅れ気味であることを指摘し「いまや待ったなしの重要課題」と強調した。
さらに「自由な経済活動を踏まえてバランスある法制化を目指すことが目的」と話した。また「ロシア侵攻による経済制裁の影響」はじめ「半導体」問題にも触れ、さらに今後は経済安保関連の人材育成のテーマが迫っていることにも言及した。
幅広く、事業者の意見も…
一方、17日、経済安全保障推進法案は衆議院で審議入りした。政権与党は6月15日までの会期中に成立させたい方針。同法案は先端技術の保護などを骨格とする4本柱で構成されており、罰則は2年以下の懲役か150万円以下の罰金(いずれも最大)と盛り込まれている。
また、基幹インフラの重要設備審査が義務付けられているが対象となる企業・設備は明記されておらず、「指定基準を設ける際には事業者を含め広く意見を求める」としている。
「ロシア侵攻」では、ウクライナへのサイバー攻撃、化学兵器使用への懸念、原発施設の被害などが報道され、関係者から法制化の必要性の意識はかなり髙まった―との見解も出ている。
経済界の主要な意見も公表され、今後は会期内(6月15日)経済安保法案審議に関心が高まっていく。
以上