産学に着実な実績、高まる評価 

「日本経営倫理学会」第30回記念発表大会開く 

 日本経営倫理学会=JABES(潜道文子会長、拓殖大学副学長)の第30回記念研究大会が2022年7月30日(土)、拓殖大学文京キャンパスで開かれた。連続2日間の日程。
 同学会は1993年、我が国初の経営倫理(ビジネス・エシックス)に関する専門的研究組織として設立された。
 初代会長は故水谷雅一氏(神奈川大学教授)。企業経営における人間性・社会性の実現などが中核テーマであり、産学両界の有識者らが創設時から積極的に参加した。
 研究発表大会は発足時から学会の主要活動として展開を続けられ、教育・研究機関以外の企業人、学生らの参加があった。経営倫理関連の幅広いテーマ、課題探求についての研究成果が発表、議論されてきた。。

明るく、前向きな「経営倫理」を…

 今大会の総合司会は劉慶紅(学会常任理事、立命館大学教授)が務めた。同学会・潜道文子会長が、開会のあいさつ。同会長は、今回の30回目の大会は、初回、10回、20回に続く重要な節目で、次なるステップへ確実に歩んでいく。明るく、前向きなイメージを持つ「経営倫理」を目指し活動を進めていきたい、などと述べた。 
 大会初日午前中は、3会場で12の研究発表が行われた。学生・大学院生、女性研究者らによる発表も多かった。午後は「統一論題シンポジウム」として「経営倫理30年の歴史と展望―グローバル時代の理論と実践」があった。
 参加は高巌(明治大学)、梅津光弘(慶応義塾大学)両氏のほか、企業人として渡辺奈々美氏(ジョンソン・エンド・ジョンソン)と畑中晴雄氏(花王)が参加した。同学会は発足当初からの産学共同型の研究活動を重視していただけに、今回の民間2氏による参加は注目された。 
 シンポジウムでは4氏による講演の後、約1時間のパネルディスカッションが行われた。同学会30年の軌跡を踏まえ、経営倫理の理論と実践について、専門的な視点から踏み込んだ討議があった。 

「経営倫理」の幅広い情報発信の場…

 大会2日目の7月31日(日)は、同会場で研究発表と閉会式が行われた。前日からの研究発表は3会場に分かれて続けられ、2日間を通じ計30の研究発表があった。
第30回大会の特色は、

  1. グローバル活動が従来以上に活発してきたこと。世界の学術関連組織は、人的交流、情報共有など国際化路線が強  まってきており、その中での本学会の活動が注目されている。
  2. 学会発足時からの中核テーマである「産学による調査研究と実践」についても幅広い分野・年齢層から参加があり、関心が寄せられている。
  3. 企業不正や事故など、企業リスク対応に関連するテーマでの研究、発言もあった。いわゆる企業不祥事など、経営 倫理の“負の現象”を注視しつつ対応のあり方に関心が高まっている。これら危機管理ノウハウ等を含めて理論構築も迫られている。

 経営倫理(ビジネス・エシックス)を専門的に研究・調査する学術センターとして日本経営倫理学会に対する期待は拡大しつつある。行政や産業界へ有効な知識と情報を提供する役割が期待されている。今大会は学会活動30年の実績評価とともに、今後のさらなる30年へ向けての活動が注目される。
 なお同学会では2023年3月に学会設立30周年のイベントを実施する予定。


⦿第30回記念発表大会・実行委員会の委員(敬称略)

  • 委員長  潜道文子
  • 委員  河口洋徳 村山元理 葉山彩蘭 劉慶紅 杉本俊介 斎藤悦子
  • アドバイザー  蟻生俊夫 小方信幸

(経営倫理フォーラム編集部)