◆社会的な戦略に基づく政策運営を 

千賀 瑛一  日本経営倫理士協会専務理事
(日本記者クラブ会員)

新浪・経済同友会代表幹事が会見

新浪剛史・経済同友会代表幹事(サントリーホールディングス代表取締役社長)の記者会見が2023年9月29日、日本記者クラブ(千代田区内幸町)で開かれた。新浪氏は今年4月27日、飲料メーカーのトップとして初めて経済同友会の代表幹事に就任した。新浪氏は三菱商事出身。ローソンの社長・会長を経て、2014年からサントリーHDの代表取締役社長。

会見では低迷する日本経済の問題点を分析。今後の経済財政運営のあり方などの重要課題について幅広い視点から提言した。さらに経済同友会の役割、方向性についても話した。特に社会的な戦略眼に基づく政策運営を官民で強力に推進することの必要性を強調した。

民間主導型経済の推進を…

前半の現状・分析では、社会が大きく変わってきているとしてデフレ経済にいかに適応するか、またコスト削減による新価値創造へのチャレンジは止まってしまったのではないか、など指摘。さらに重点的に利益確保に腐心している経営姿勢なども問題視した。デフレ傾向による成長低迷での「失った30年」という厳しい現実を直視すべきであると話した。

また、主観的な見方であるとしながら、「アベノミクス3本の矢」の展開にも触れた。また需給ギャップをみて財政で埋めるという、その場しのぎの支出に終始したとも指摘。官製経済型の限界や、国内投資・人財投資の活性化による民間主導経済への必要性を強調した。

最低賃金が10年ぶりといわれる高水準に達したことも指摘。さらに円安、値上げ等で収益が上がっている企業などについても触れ、インフレマインドから脱却して、真の経済成長実現のチャンスであると強調した。

NPOなど民間を活用しての国づくり

内外の重点課題として、経済のブロック化、サービス中心の人財不足をあげた。外圧という「プッシュ型インフレ」が日本に波及していることを指摘。これからの経済財政経営については、人財の流動化をとりあげた。さらに生活の場の課題として介護、福祉を指摘しているのが目立った。育児・介護をしながら正社員で活躍できる仕組みづくりが必要と訴えた。「年収の壁」問題にも言及するとともに「5年後の最賃1500円の実現」も言及した。
また競争力強化のためのエネルギーコスト低廉化については、中長期的にはエネルギー海外依存構造を断ち切る、としている。官民あげての資源投資の必要性などを強調した。この他、デジタル領域などの政策課題も説明した。
最後に経済同友会の役割として「共助資本主義」を基本に、NPOなど民間の力を活かした、新しい国づくりを提言した。

以上