«1» サバクトビバッタと倫理 

経営倫理士 北村 和敏(大塚製薬工場)

 2020年、中国武漢から始まった新型コロナウイルスの感染は、いまだに世界中で拡大を続け収束の目途が立っていません。9月中には世界の感染者総数は3,000万人、死者数は100万人を超すのは確実のようです。

❖アフリカ大陸産…億兆の群れになって

 ところで今回のお話は新型コロナではなく、アフリカ、インド、中国で大発生しているサバクトビバッタについてお話しします。このバッタの習性が少しずつ解明されるにしたがって、何か組織社会で働く我々人間に似ていることに気づいたのです。
 今年4月頃から、大発生したこのサバクトビバッタ、名前からしてインパクトがありますよね。発生はアフリカ大陸の西岸のようです。それがなんと数千億から数十兆単位の群れになって飛び回り、穀倉地帯に大被害を及ぼしているのです。
  中国では食糧被害を懸念して穀物の備蓄を始めています。ちなみに中国は新型コロナ感染、大雨による洪水、そしてバッタの被害と三重苦の状態です。余談ですが歴代の中国王朝が滅んだきっかけが、疫病・洪水・蝗害(バッタ)ですから中国も今回のサバクトビバッタの件は尋常ではいられないですよね。

画像出所:ぬまがさワタリ@『ふしぎな昆虫大研究』(角川書店)より

 さて、このサバクトビバッタですが、普段はどこにいるかもよくわからないくらいの存在なのです。性格も穏やかで、移動も夜間に飛んでいるので人目にも付きにくいようです。それが何かのきっかけで集まると4VA(4-ビニルアニソール)という化学物質、一種のフェロモンを発出します。そうなるとさあ大変! 連鎖的に集まり、集まるだけでなくお互いが刺激し合って性格も体格も変わるようです。
 これを専門用語では「群生相」というようですが、群生相化すると体も羽も巨大化し、羽の色が黒ずみ、性格も狂暴になり、普段食べない穀物までも食い尽くすのです。一人では何もできないヤンキーみたいですね。さらに繁殖力が半端じゃないのであっという間に大群となり、しかも昼間に長距離飛行が可能になるのです。まさに仮面ライダーのように大変身をするのです。(ライダー変身!って感じです)

❖何か人間の組織社会に似ていて…

 これって企業で働くビジネスマンになにか似ていませんか?ふだんは一市民としての穏やかな性格が、企業の中で働き出すと人が変わったように競争性と効率性を冷徹に追求していく性格に大変身する人がいます。昔は「男は一歩外に出れば七人の敵がいる」とか「24時間働けますか、リ〇イン」とかそんな時代もありました。今はグローバル化による競争激化と人員削減という環境が一市民を変身させ、利益至上主義となり、ハラスメントやコンプライアンス違反、そして挙句の果てが不正事件に走らせます。
 サバクトビバッタは目の前にある穀物や野菜はなんでも食い荒らし、さらに食べるものがなくなると弱い仲間を共食いするようです。これも人間の組織社会で起こるハラスメントによる自殺と似ています。

 何故、人は組織で群れをなすとサバクトビバッタのようになるのでしょうか。人間もサバクトビバッタも同じ生き物だから…それって少し寂しいですね。
 人は一市民の時は公共性を持ち、倫理的にも相手に対して共感と共鳴ができる穏やかな性格の人がほとんどだと思います。それがひとたび組織の中に入ると経済性が全面に出過ぎて自己中心的な行動と発言をしてしまいます。まさにサバクトビバッタと同じです…さらに寂しさが募りますね。
  人は理性があり、自分の行動を見つめ直す能力があるはずです。組織には理念やミッションがあるはずです。それは社会との共鳴を忘れないための意思表示です。厳しい状況や流されやすい環境の時にこそ、自分の行動が社会性・人間性を踏み外していないかを自問自答しなければならないのです。そうでないと、あなた! サバクトビバッタって言われますよ。