(19)失敗とリスク管理の狭間―バックカントリースキーで想う―

ACBEE総合企画委員 佐藤 直人(エイワイファーマ)

 2019年2月に、新潟県のスキー場でバックカントリーに出た男性2名が夕方になっても宿に戻らないとのことで捜索が行われ、2日後の朝方にヘリで発見、救助されました。発見時の雪洞の入り口に張ったオレンジ色のツエルトの映像があったことで、テレビで繰り返し報道されましたし、2人による会見もありました。何より、無事に生還できたことは良かったと言えますが、一般の方は、コース外を無謀に…ととられたでしょうか。

 実は当日、私は友人とそのスキー場に行っており(バックカントリーはしませんでしたが)、天候などはよく知っている環境下での遭難でしたので気になりました。朝から小雪がちらつき、曇り空で気温は低め、スキー場上部は風もあり、またガスがかかって雪面は見にくい状況でした。目標物が少ない上部のコース外の視界はかなり悪かったと思います。吹雪ではありませんでしたが。

■捜索保険への加入も必須の時代

 スキー場のリスク管理としては、このスキー場は過去の遭難を教訓に、スキー場最上部にゲートを設け、登山届を係員に提出した上でビーコン(雪崩で雪に埋まった時に発見しやすくする電波送受信機)の作動チェックを経ないと出られないようにしています。「スキーヤーの基本的な準備と装備を確認して、あとは自己責任で」とのルールです。また、そのようなルールをコース地図と共に周知しています。個人的には、当日の天候でゲートを開けたスキー場の判断はいかがだったかとは思います。

 一方でスキーヤーのリスク管理としては、冬山のバックカントリーにおける“三種の神器”と言われる、ビーコン、プローブ(ゾンデ)、スコップを持参することから始まり、当然のことながらどのような雪面でも安全に滑れる技量やルートファインディングが求められます。他には地図は当然ですが、最近はGPSにより現在地確認ができるようになりました。報道によれば、スマホは2台とも圏外だったとのこと。もちろん、捜索に係る人的、金銭的負担もリスク管理の内ですし、そのための保険加入も必須の時代です。

 なぜ無事に生還できたかと言えば、過不足無い装備と雪洞を掘るなどして体力を温存したことでしょうか。登山届では遭難するような危険なルートをそもそも選択していたとは考えられませんが、悪天候にもかかわらず、本来滑り込んではいけない南南西の沢に降りてしまったという失敗に尽きるでしょう。視界が悪くなった状況下での現場判断に、油断や誤りがあったと考えられます。

■予定変更してでも安全優先する勇気を

 基本的なリスク管理ができていても、ヒトがリスクに立ち向かう以上100%の安全はありません。状況変化に応じて、予定を変更してでも安全を最優先する勇気を持たなければならないでしょう。リスク管理は、事件・事故が起こらないように想定をして対策を立てておくことですから、どこで判断ミスをしたのかは再発防止の上でも重要です。

 同じ趣味を持つ私としては、スキー場もスキーヤーもリスク管理を行った上での失敗ですから、あまり追求するつもりはありません。本当に知りたいのは、どこの局面で判断ミスによる失敗をしてしまったかですし、敗因分析をしっかりと行うことが、リスク管理のPDCAを回すことになります。今後の専門誌などでの情報提供を期待したいところです。 遭難時の捜索費用をカバーする保険に私は入っていますが、保険料を毎年支払うたびに「使うことなく過ごしたい」と切に願っています。