(23)テニスコーチに学ぶ、もう1つのこと

ACBEE総合企画委員 川瀬 暁 
(アーティゾン美術館=旧ブリヂストン美術館)

 週末にテニススクールに通っている。テニスはかなり前に始めたが、頻繁に転勤がありなかなか継続することができなかった。この5年くらいは転勤もなく何とか続けている。クラスメートと一緒にテニスを楽しんでいる。

テニスコーチという仕事

 スクールといってもサービス業だから、コーチやスタッフは皆とても感じが良い。クラスではコーチが1人もしくは2人付き、テニスの技術とゲームの進め方を教えてもらう。指導の内容は決まっているが、指導の仕方はそのコーチによって個性がある。その中でもスクール生に人気があるのは、やはり教え方が上手なコーチである。どこが上手なのか?私のクラスのコーチ(M氏)の話をしたい。

上手な教え方とは?

 サーブでもストロークでも、コーチは標準形をお手本とし、それを体得させるように指導する。間違いではないが、スクール生(特に私)はなかなかその通りにできないのである。これまで体に染みついた動作の癖(自分も気づかない場合も多い)があり簡単ではない。M氏もまずこの癖を直そうとするが悲しいかな、そう簡単に癖は治らない。すぐにできたら今頃プロテニスプレーヤーになっている、と最近は居直っている。するとM氏は、その癖はそのままにして、どうすればうまくいくか、を考えて指導してくれる。サーブも多少ぎこちなくても、要は相手コートの指定されたエリアに入れば良いのである。 

 そもそも週1回しかラケットを握らないのだから、なかなか技術も向上しない。特に私のような年齢になると、うまくなるのは二の次で、とにかく続けることが目標である。でも、ほんの少しずつでもうまくなりたいのが人情。M氏のアドバイスで、それまで「できなかった事」が「できるようになった事」は幾つかある。すると何だか自分が少しだけテニスがうまくなったような気分になり、テニスを続ける大きなモチベーションになる。 

■翻って我が身をみると…

 つまりM氏は、理想とするプロセスを押し付けるのではなく、個人個人の癖、個性を尊重しながら結果を出す手助けをしているということになる。
 会社で部下を指導するという、いわゆる管理職になってから長年経つが、自分はM氏のように指導してきただろうかと考えることがある。自分の考えや組織の論理を「正しい」ものとして、部下に押し付けてこなかっただろうか。納期通り結果を出すために、自分のこれまでのやり方を強いてはいなかっただろうか。
 残念ながら合格点はもらえそうにない。幾つになっても反省することは多い。