(26)愛犬が教えてくれたこと

ACBEE プロジェクトプランナー 村瀬 次彦

 麒麟麦酒(株)の医薬事業部門に勤務していた2005年頃、麦酒事業の先輩から2匹の生まれたばかりのルビー(赤褐色)の子犬(キャバリア)を譲り受けました。デンデン(♂)とチャチャ(♀)と名付けたパピーは家族の一員となり、京都御所や鴨川辺りを散歩や遊び場(京都に持ち家を構えたため)として、多くの友達にも恵まれてすくすくと育ちました。煽りを受けた(?)私は東京で単身赴任生活をすることになったのです。東京に行くときは、決まって揃って心配そうとも寂しそうとも受け取れる、なんとも言えない表情で玄関先までお見送りをしてくれました(写真)
 デンデンは10歳の時に、そしてチャチャは、今年3月に私の腕の中で穏やかに静かに息をひきとりました。こころにぽっかり穴が開き、彼らの存在の大きさだけが今も頭から離れない日々が続いていますが、多くの想い出と人々を繋いでくれたことに感謝の気持ちが満ち溢れています。

近江聖人の教え

 日本人としての生き方を模索する書として、内村鑑三(1861~1930)が、日本の文化・思想を西欧社会に紹介した『代表的日本人』という書の中で、江戸初期の儒学者であり「近江聖人」と呼ばれた中江藤樹(1608~48)の生涯を描いています。40歳で没するまで14年間、心学を教え、庶民教化に専念し、近江商人にも影響を与えたと言われています。その教えは具体的で、和やかな顔つきをし(一貌)、思いやりのある言葉で話しかけ(二言)、澄んだ優しい眼差しで(三視)、人の話に耳を傾けて聴き(四聴)、思いやりのある気持ちを表す(五思)ことであると、説いています。

■「五事」を体現、忠実に実践してみせた愛犬

 こじつけかもしれませんが、この「五事」を最も忠実に、日々、実践してきたのが私の愛犬であったように思えてなりません。「食事をするとき、遊ぶときはそのことにまっすぐ集中する」「過去や未来は気にせず、今を生きるすがた」「言葉以上に表情や行動で語りかけてくる」などなど・・・。おかげさまで私も随分と彼らに教育されました。言葉が話せない分、一生懸命、彼らの一挙手一投足に集中するため、自然と周囲に配慮することが当たり前になるのだと思います。

 企業や各団体・組織の不祥事が相次ぎ、極端な営利主義や利己主義、権利主義が横行する世の中だからこそ、こころの繋がりを大切にする。そのことを今も彼らは静かに私たちにメッセージとして送り続けているかのようです。