ジェネリックのトップ企業、経営再建

不正製造処分で欠品や納品遅れ拡大

 5月13日、ジェネリック(後発医薬品)のトップメーカー、日医工(本社・富山市、東京、田村友一社長)は事業再生ADRの手続きを申請し、受理されたと発表した。不正製造のよる行政処分などが影響して業績が悪化し、2022年3月期連結決算は1000億円余の最終赤字となった。ここ数年、ジェネリックメーカーでは不祥事による行政処分が相次ぎ医療現場で欠品や在庫不足が続いている。ジェネリックの品質や供給への不安が再燃しており、政府の医薬行政に影響を及ぼす恐れもある。

日医工など業務停止処分が相次ぐ

 事業再生ADRは裁判外紛争解決手続利用促進法に基づき、過剰な債務に悩む企業が法的整理ではなく、国が認定する中立の専門家を介して債務者の協力を得て再生を目指す制度。日医工は同日、事業再生実務者協会に制度の利用を申請し、受理された。今月26日の第1回債権者会議ら事業再生計画案の概要を示す。
 同社によると、メインバンクの三井住友銀行から融資枠を確保したほか、ジャパン・インダストリアル・ソリューション(JIS、日本政策投資銀行など出資)から最大200億円の融資を受ける。
 また同日発表した22年3月期の連結決算は1048億7400万円の最終赤字となった。前年3月期にも41億7900万円の赤字を出しており、業績がさらに悪化した。
 同社は赤字拡大の要因として①富山工場で製造販売承認書と異なる工程で製造したため富山県から行政処分(32日間などの業務停止命令)を受け、生産停止や出荷調整を余儀なくされた➁先に行政処分された小林化工(福井県あわら市)の影響で一部医薬品が販売中止になった③米国で開発中のバイオシミラー(後発のバイオ医薬品)や稀少疾病薬治療薬の申請が大幅に遅れた④21年度薬価のマイナス改定が響いた─などを挙げた。

ジェネリック割合を8割目指す

 「ジェネリックメーカー・トップ10位を目指す」、「安心と信頼への約束」。これは日医工がホームページに載せている企業の目標と理念だ。
 21年3月期決算(一部20年12月決算含む)などから主要なジェネリックメーカーの売上高を比べると、トップが日医工、2位がサワイグループHD(大阪市)、3位が東和薬品(大阪市)となっている。先発医薬品メーカーを含めた医薬品メーカーランキングでは、日医工が15位、サワイグループHD16位、東和薬品17位となり、ジェネリックメーカーの成長ぶりがうかがえる。
 ジェネリックメーカーが成長した背景には政府の強力な医療費抑制策がある。先発医薬品の特許切れを待って生産されるジェネリックは研究開発費などのコストが少なくてすむため薬価は半分程度(バラ付きがある)で医療費抑制効果が極めて高い。


 厚生労働省は処方薬におけるジェネリック割合(ジェネリック率)の21年度目標を8割(数量ベース)とし、医療機関や保険者、患者団体などに先発医薬品からの転換を呼び掛けてきた結果、都道府県によって多少差があるものの、国内全体では目標に達成したとみられている。
 しかし、ジェネリックの生産は多種多様な商品を短期間に製造しなければ、激しい企業間競争の中で品質管理が疎かになりやすい─と以前から指摘されていた。
 国が承認した製造販売承認書と異なる工程で生産したり、それを承知で販売したりして行政処分された企業は21年だけで日医工や小林化工、久光製薬(佐賀県鳥栖市)など8社、22年に入ってから共和薬品(大阪市)が行政処分された。
 相次ぐ不祥事による影響が医療現場を直撃し、今でも欠品や納品遅れのため処方薬の変更を余儀なくされている医療機関や調剤薬局が少なくない。また常用している処方薬を突然変更されて当惑する患者もいるようだ。
 5月12日、経済安全保障推進法が成立し、政府はサプライチェーン(供給網)の強化策として半導体などの戦略物資の国内調達や備蓄に取り組むことが決まった。国民の命と健康を守る上で医薬品の品質保証と安定供給も不可欠ではないか。

福祉ジャーナリスト 楢原 多計志