第23期経営倫理士講座 第2回②講義レポート

講師:浜辺 陽一郎  
講師所属等:青山学院大学法務研究科教授
弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニック弁護士  
講義テーマ:「経営倫理と法務」

法的観点から経営倫理を解説

 第2回講義は、5月29日、浜辺陽一郎講師(青山学院大学法務研究科教授、弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニック弁護士)による「経営倫理と法務」。

コーポレート・ガバナンスへの基本ステップも
解説する浜辺陽一郎講師

■経営倫理の要請

 まず、浜辺講師はCSRとコンプライアンスを比較し、CSRがヨーロッパにおいて法的強制を伴わない形から出発し、コンプライアンスが主に米国連邦量刑ガイドラインの影響を大きく受け法的規制遵守から出発したが、両者はいずれもステークホルダー理論が背景にある点で共通すると指摘された。また、日本における社会的責任(CSR)論を重視した経営やコーポレート・ガバナンスコードにも言及され、法律は不完全なものであり、経営倫理が経営にとって必要であるとされた。

 コーポレート・ガバナンスでは、企業経営の効率性と健全性を共に追求することを目的にしており、両者の機能は相互補完関係にある。コンプライアンスやCSRは健全性を高めるために不可欠であり、目的を実現するための手段として内部統制があり、手法としてリスクマネジメントがあると解説された。
 成熟した高度情報化社会においては、不祥事が明るみに出やすい社会環境となっているため、コンプライアンスの確立は急務であるとされた。

■コンプライアンス推進と内部統制システム

 次に、コンプライアンスの強化手段として法制化されている会社法による内部統制システムの制度化、金融商品取引法によって上場企業に求められる内部統制報告制度について説明し、両者には相違点はあるものの7つの共通点に着目して一体として取り組むべきであるとされた。さらに公益通報者保護法を踏まえ、内部統制システムの一環として内部通報制度をうまく機能させることで組織内の自浄作用を働かせることができ、改正独占禁止法によるリニエンシー制度(課徴金減免制度)とのシナジー効果により企業社会のコンプライアンス態勢強化の流れが確立してきたと解説された。

 さらに、経営倫理を推進する上でトップから一般従業員まで、その経営環境の変化をどう認識させるかが課題である。あらゆる変化の流れがコンプライアンスを要請しており、企業防衛や企業ブランド維持・向上の観点からも、経営倫理の重要性を理解することができると説明された。

■コンプライアンス経営の技法と内部統制のあり方

 引き続きコンプライアンス経営実践の基本的ステップとして、情報収集→ルールの確立→ルールの明示・宣言→監督責任者の権限確保→効果的研修・教育プログラムという事前予防と報告システム・問題処理窓口体制の整備→トラブル対応・事後調査→処分・公表・反省という事後対応の基本的なステップを押さえておくべきであると強調された。

 コンプライアンス経営の基本的な考え方として、合理的・論理的・現実的思考と共に、情報の共有化・経営の透明性が重要である。「コンプライアンス経営」の導入はできるところからやり、結果重視よりプロセス重視で考えることであるとされた。

 最後に、コンプライアンス経営を成功させるためには、①既存の体制の改善とフル活用、②臨機応変な対応、③従業員全体の参加意識、④“やらされ感”ではない戦略的・積極的な取り組み、⑤業務改善・合理化と企業価値向上への結びつけという5つのポイントが重要であるとされた。
 講義終了後、内部告発者が属する企業が不利益を受けた事例への評価、コンプライアンス経営への従業員の参加意識向上について積極的な質疑応答が行われ、浜辺講師から経営倫理士として活動することに対する期待のメッセージが受講者に贈られた。

               (講義リポート:総合企画委員 新 勝幸)