第23期経営倫理士講座 第7回⑩講義レポート

講師:水尾 順一 / 近藤 恵美(事例紹介)
講師所属等:水尾講師:日本経営倫理学会副会長/駿河台大学名誉教授・博士(経営学)/ 経営倫理実践研究センター首席研究員
近藤講師:サントリーホールディングス コンプライアンス室長/経営倫理士
講義テーマ:「内部通報認証制度とその効果」

認証取得で令和の時代にしなやかに生き延びる組織能力を

 第7回講義は7月18日、水尾順一講師(日本経営倫理学会副会長で 駿河大学名誉教授・博士 )による消費者庁「内部通報認証制度の概要とその効果」について、後半は近藤恵美講師(サントリーホールディングス(株)コンプライアンス室長)による内部通報制度とコンプライアンス推進についての取り組み事例の紹介をいただいた。

「不祥事の予防と解決に内部通報制度が不可欠」と
力説する水尾順一講師

■相次ぐ企業不祥事からの回復力

  1987年を日本における「経営倫理元年」と位置付けられる。平成元年では、世界時価総額ランキング50社において、日本企業が32社ランクインしていたが、平成最終月は、5社と大幅減となっている。要因としてコンプライアンス違反倒産が6年連続200件超えで発生しており、相次ぐ企業不祥事があげられる。
 令和の時代に必要な組織能力として「レジリエンス(resilennce)」、すなわち、厳しい経済環境の中にあっても、しなやかに適応して生き延びる力が必要であり、不祥事の予防と解決のためには、内部通報制度認証が必要であると説明された。

■実効性の高い内部通報認証制度へ

 内部通報制度は、企業不祥事が相次ぐなか、設置することの是非よりも、「実効性の高い制度」の構築にその焦点が移っており、認証制度は消費者庁が優れた内部通報制度を整備・運用する企業を高く評価するものである。内部通報の前に安心して相談できる相談窓口や、問題が起きる前の相談窓口を有効に機能させることが制度認証となる。内部通報制度認証は、第1段階として自己適合宣言登録(7/21現在、13社が登録済み)、その後、第三者による内部通報制度認証の2段階となっている。
 認証の重要ポイントとして、トップのコミットメント(宣言、トップメッセージの発信)が必要で、非営業部門のコンプライアンス部門をバックアップすることにある。そして、トップを動かすのも部門担当者の役割であることを認識すべきである。

 内部通報認証制度の最終的な狙いは、企業不祥事を無くすことであり、そのためには基本となるコミュニケーション(風通しの良い職場作り)が重要であるとした。そして、コンプライアンス、内部相談・通報制度の浸透・定着に向けての重点項目として、以下の3点を挙げた。
 ①優しい(わかりやすい)言葉で、「目線は社員、視点は社会」②利用のしやすさ、垣根(敷居)を低く、「アクセスビリティ」であること③常に意識にとどめる「リーダーの継続的なコミットメント」―で、体験談や企業が工夫している具体的事例を交え紹介された。

 さらに、ある企業が10年で再上場を果たしたポイントとして、トップのサーバント(部下を支援する)リーダーシップにより、トップのコミットメントと現場の参画により、自由にものが言える企業風土を構築できたことが、成功の秘訣(ひけつ)とした。
 認証取得の効果として、守秘義務の履行や相談者保護により従業員や役職者への安心と信頼感を得ることができ、自浄作用や事前の相談機能を高められる。さらに、多くのステークホルダーに対しても安心・安全・信頼を提供することで、レピュテーション(世評)や企業業績の向上につながることを説明された。

■制度認証を成功させる秘訣(まとめ)

・何でも相談できる「風通しの良い企業風土」づくり。
・未然のために「事後の相談よりも、事前の相談」。
・個人の倫理意識を高めることにより、倫理的な企業文化がつくられる。

 企業と社会は、「道徳と経済の両立」であり、歴史を学ぶという視点で二宮尊徳「道徳経済一元論」、渋沢栄一「道徳経済合一説」、石田梅岩の石門心学の紹介があった。
 最後に、「内部通報認証制度」は世界のグローバルスタンダードになり得るものであり、世界の企業に先駆けて導入して、グローバルレピュテーション・業績の向上を獲得されるよう願われ、講義は終了した。

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サントリーグループの内部通報制度とコンプライアンス推進の取り組み

近藤 恵美 講師

 サントリーグループのコンプライアンス経営は、法令遵守はもちろんのこと、企業倫理や社会常識に則った行動をとり、社会やお客さまの期待に応え、企業の社会的責任を果たしていくことを定義としている。その一つの柱であるグループの内部通報制度であるホットラインの運用状況(規定)については、ホットラインの受け付けから、相談者保護を最優先にした調査、関係部門・専門家との連携も取りながらの是正措置と再発防止策、そして経営層へのリポートの対応フローについて概要説明をいただいた=写真

■ホットラインの信頼性確保のために

 ホットラインの信頼性確保のための調査対応時の姿勢として、匿名性の確保(対応に必要な場合は本人の承諾を得る、犯人探しをしない)、情報取り扱いの姿勢(情報開示範囲は必要最低限)、「迅速」「誠実」な対応、フォローアップが大切であることを挙げた。

 また、内部通報制度が機能するためには、前提条件として啓発・教育の実施、ホットライン制度の存在周知と意味や意義の認知や理解が必要であること。そして、ホットライン基本原則である、①匿名性の確保、②誠意ある対応、③受け付け案件は速やかに報告・情報共有、④調査は組織的に行う、⑤被通報者のプライバシー・人権にも配慮―などの徹底が必要であることを説明された。また、各社ホットライン担当者の対応向上を図り、グループ全体のホットライン窓口における信頼性の確保につなげるために、研修や情報交換会を継続的に実施していることを発表された。
 その後、具体的な事例とコンプライアンス体制について活発な質疑応答があり、講義を盛り上げていた。

           (講義リポート:ACBEE総合企画委員 山口 達哉)