第23期経営倫理士講座 第9回⑫講義レポート

講師:大田 博樹
講師所属等:日本経営倫理士協会理事/神奈川大学経営学部 准教授
講義テーマ:「経営倫理と会計学」

内部通報制度の拡充が有用 不正防止の限界も

 第9回⑫(9月11日)の講義テーマは「経営倫理と会計学」。企業ぐるみの粉飾決算や不正融資など、不正会計の発生メカニズムについて事例を交えて明らかにするとともに、それらのリスクを低減させる手法について会計学の視点を中心に考察した。

企業会計の概要

会計担当者の裁量が大きくなると不正会計の芽が
出やすくなることなどを解説する大田博樹講師

 企業会計の目的は、「利害関係者が意思決定を行う際に役立つ情報を(貨幣単位)で認識・測定・報告する行為」と定義している。一定期間の経営成績を示す損益計算書と一定時点の財政状態を表す貸借対照表の説明、さらに会社法や金商法などの法規範と会計原則などの慣習規範について、具体的な事例を用いた解説により理解が深まった。 また、会計学の一 般原則における引当金の処理、減損の処理、のれんの処理について、会計担当者の裁量が大きくなると不正会計の芽が出やすくなることが示唆された。

■不正に関する調査

 2018年日本公認不正検査士協会の報告によると、不正の発見手段としては通報40%や内部監査15%で半数を超え、外部監査等で発見される機会は4%に留まっている。また、通報者の割合においても従業員が50%を超えており、内部通報制度の拡充が不正の発見手段として有用である。

■不正発生の環境要因と不正防止機能

 不正発生の環境要因として、動機・機会・正当化が重なったときにリスクが増すとする「不正のトライアングル」や「企業風土」、「内部統制の脆弱性」の3つが挙げられる。不正防止機能として、独立取締役と三様監査の活用、そしてコンプライアンスの整備、業務プロセスの適切な職務分離、採用、人事ローテーション、公正な人事評価などの社内システムの構築が求められる。

■不正を発生させない企業風土を(まとめ)

 不正防止の観点からは、コンプライアンスの整備や不正を発生させない企業風土(経営理念、経営倫理の浸透)を作り上げるしかなく、会計不正を防ぐことの限界が改めて示唆された。

(講義リポート:ACBEEプロジェクトプランナー 村瀬 次彦)