第23期経営倫理士講座 第11回⑮講義レポート

講師:水尾 順一
講師所属等: 日本経営倫理学会副会長/駿河台大学名誉教授・博士(経営学)/ 経営倫理実践研究センター首席研究員
講義テーマ:「経営倫理とCSV」

時代の要請に応える新たな市場原理を解説

 水尾講師は第7回⑩講義「内部通報認証制度の概要とその効果」(7月18日)に続き2回目の登壇であった。 10月2日の本講義の後半ではグループワークを採り入れ、受講生から活発な意見が示された。

■企業を取り巻く環境変化

CSRからCSV、SDGsへ――企業;組織に普及・啓発するための最も重要な要素は、実践者となる従業員の全員参加、とする水尾順一講師

 近年CSV、SDGsや環境・社会・企業ガバナンスに配慮している企業を重視、選別して投資するESG投資などを背景として、企業を取り巻く環境に変化が生じており、これらの活動目標・概念とCSRとの関係が説明された。これらは時代の要請に応えるCSRの重点課題として位置づけられ、CSRの定義や4段階(法的責任・ 経済的責任・倫理的責任・社会貢献)および、ESDやサ ーバント・リーダーシップの位置づけなど、CSRの全体像に関する基本的な考え方を解説した。

■市場原理としての歴史と事例

 次に、CSRの歴史および2011年に提唱されたマイケル・ポーターとマーク・クラマーの「共益の創造(CSV: Creating Shared Value)」を解説し、その事例として、株式会社生活の木の取り組みを紹介した。さらにESG投資とSRバンキングの説明を行い、CSRが市場原理として動き出し、経営を変えた事例として、SCSK(スマートワーク)、日本生命(男性の育児休業取得100%)、アデランス(ダイバーシティセミナー)などの取り組みが紹介された。

守りのCSRと攻めのCSR

 休憩を挟んで行われたグループワークでは、1グループ5、6名のチームを作り、CSRにかかる今日的重点課題をテーマに話し合いがされ、発表を行った。守りのCSRとしては個人情報保護法、独占禁止法の遵守および管理体制の強化が指摘されていた。攻めのCSRには環境問題への対応が多く挙げられた。

CSR浸透・定着の要件

 CSRの体系化と浸透・定着にはESD(持続可能な開発のための教育:Education for Sustainable Development)とサーバント・リーダーシップがその要件であることが示され、駿河台大学や専修大学での水尾ゼミの活動、米国ノードストロームの取り組みが紹介された。さらにサーバント・リーダーシップを実践した人物として、上杉鷹山や松下幸之助も引き合いに出された。
 また、すべてのステークホルダーに対する「共感(Sympathy)の思想」が必要というアダムスミスの主張する実践例として、株式会社ダイセルが行っている社内研修(見える化・聞ける化・言える化)が紹介された。
 最後に、2030年を目標に持続可能な17の開発をグローバル目標に掲げたSDGsを社内へ普及・啓発するカギとなるものは、その実践の立役者は従業員であることからすれば、全員参加が 何よりも重要な要素となる旨が提唱された。

(講座リポート:ACBEEプロジェクトプランナー 朱 純美)