第23期経営倫理士講座 第12回⑰講義レポート

講師: 川野 洋治
講師所属等:信頼性向上マネジメントコンサルテング 代表/元 サントリーホールディングス お客様センター長/前 消費者庁政策企画専門官
講義テーマ:消費者対応と消費者志向経営

消費者対応は戦略部門  顧客と社員の声が企業を救う

 第12回⑰は10月7日、川野洋治講師(信頼性向上マネジメントコンサルテング代表、元サントリーホールディングスお客様センター長、前消費者庁政策企画専門官)による「消費者対応と消費者志向経営」。

■コンプライアンス経営に必須

「顧客の満足は企業にとって最大の資産」と川野洋治講師。
今後の課題にSNS対応

 消費者対応とは、狭義には「主として消費者対応部門における、自社の商品サービスに関する顧客からの苦情・相談・問い合わせ等に対応」であり、広義には「消費者対応部門のみならず、組織全体の課題として、顧客・消費者に真摯に向き合い、商品・サービス・企業活動全般において、 その要望・期待に応える」として説明がなされ、その実践はいずれも消費者志向経営に直結するものであり、消費者対応はコンプライアンス経営に必須であるとされた。

■消費者指向経営の推進は重要マター

 消費者志向経営については「消費者庁 消費者志向経営の取組促進に関する検討会報告書(H28.4月公表)」を出典として解説がなされた。
 すなわち、事業者が消費者全体の視点に立ち、消費者の権利の確保及び利益の向上を図ることを経営の中心に位置づける。健全な市場の担い手として、消費者の安全や取引の公正性の確保、消費者に必要な情報の提供等を通じ、消費者の信頼を獲得する。持続可能で望ましい社会の構築に向けて、自らの社会的責任を自覚して事業活動を行う。求められる行動では、組織体制の整備・充実として、経営トップのコミットメント、コーポレートガバナンスの確保、消費者対応部門と他部門との有機的連携、従業員の積極的活動があり、消費者に対する具体的な行動として、消費者への情報提供の充実・双方向の情報交換、消費者・社会の要望を踏まえた商品・サービスの改善・開発があることが説明された。
 また、参考として上記検討会報告書より、消費者志向経営の推進に当たって経営者が取り組むべき活動の具体例が示され、消費者志向経営の推進はトップマネジメントの重要マターとした。さらにACAP(公益財団法人消費者関連専門家会議)による消費者志向経営推進ステップシート、消費者志向経営のモデルとなる活動の実施状況調査結果が示された。

進化続ける企業の消費者対応と役割

 企業の消費者対応のあり方・役割は、この半世紀において取り巻く社会環境(消費者意識・行動、世論・報道、消費者行政・政策)の変化とともに進化(多目的化、領域拡大、重要性増大)した。米国における「消費者の4つの権利」、国際消費者機構による3権利の追加と消費者の5つの責務についても説明された。主な法規例として、消費者基本法、消費者教育推進法の抜粋が示された。
 「消費者対応基本フロー概念図」にて消費者対応の役割、重要性の全体像を示し、ACAPによる「調査:消費者対応部門に対して求められる期待値」、「消費者対応部門進化度合チェックマトリックス」が説明された。
 競争優位戦略(差異化)としての消費者対応では、顧客及び顧客の満足は企業にとって最大の資産であること、顧客の不満・不安は顧客との接点が薄れ、コミュニケーション(直接・間接)が不足(量のみならず質的にも)することから始まることが示され、CS・CLの獲得・維持・強化を図り、競合優位に立つには顧客・消費者との大きな接点である消費者対応部門がその重要な役割を担うとした。

■重要な7つの消費者課題

 ISO/JIS Z 26000(社会的責任に関する手引き)と消費者対応として、7つの原則・7つの中核主題・7つの消費者課題があり、7つの消費者課題の④(消費者に対するサービス、支援並びに苦情および紛争の解決)が重要であることが示された。また、ISO/JIS Q 10002(苦情対応マネジメントシステム:ガイドライン)の概要と基本原則も示され、マネジメントサイクルの推進とISO/JIS Q 10002導入のメリットが説明された。
 まとめとして、消費者対応部門はプロフィットセンター、消費者志向経営を実践するためには、消費者対応部門を戦略部門として位置付けて、経営資源の積極的導入が必要、消費者対応部門と内部通報窓口部門の連携、お客様と社員の声が企業を救う、SDGs(目標8、12)と消費者対応・消費者志向経営―の項目を挙げ、今後の課題としては、SNS対応、高齢者対応、カスタマーハラスメント問題があるとした。

(講座リポート:ACBEE総合企画委員 佐藤 直人)