講師: | 北村 和敏 |
講師所属等: | 日本経営倫理士協会常務理事・総合企画委員/経営倫理士/ ドラッカー学会企画編集委員/日本経営倫理学会員 |
講義テーマ: | 「企業人のコンプライアンス」 |
一人ひとりの強い責任感を常にプラスに
第3回講義③は、6月5日、北村和敏講師(日本経営倫理士協会常務理事・総合企画委員/経営倫理士)による「企業人のコンプライアンス」。
■コンプライアンスとは…倫理の出発点
「楽しいことより、正しいことをしなさい」との言葉が冒頭で紹介された。これは米国大リーグで活躍をしている大谷翔平が高校時代の監督に言われ、迷ったらいつも自分にそう言い聞かせている言葉である。
続いて、日本におけるビジネス倫理の源流として、近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)、渋沢栄一の「論語と算盤」、二宮尊徳の「報徳思想」、石田梅岩に学ぶ「石門心学」が紹介された。ビジネス(競争・もうける)と倫理(道徳・規則の尊重)のバランスをどのようにとるかが課題であるが、社会環境によりそのバランスの基準は変化してくる。倫理の出発点となる事柄を認識することの大切さが述べられた。
さらに、「倫理・コンプライアンスは利益の足を引っ張るものではない。企業は世のため、人のために、創業の理念を実現することを目的とする。利益はそのための担体である」ことが説明された。
コンプライアンスを「法令や社内規則などの遵守、法律や社会規範の尊重という意味。さらに、その背景にある精神を理解し、行動実践すること」として示された。
コンプライアンスは「法令を遵守するという他律的な狭義のコンプライアンス」として1960年代の米国で用いられはじめたが、1980年代に日本に入って来て「社内規範や社会規範を遵守し、社会的要請に積極的に応える自律的な広義のコンプライアンス」に変化してきた経緯などが説明された。
■不祥事事例からコンプライアンスを考える
日本で起きた企業不祥事の種類と変遷を事例で紹介し、特にパロマ事件からの教訓として、「コンプライアンス≠法令遵守」が説明された。
コンプライアンスは、本来は「相手の願いや期待に応える」という意味であり、一歩進んで「相手の身になって考え、行動すること」。また、企業不祥事「発覚」と多発の原因として、寛容な時代から厳しい社会非難と制裁の時代への変化が挙げられた。
■それぞれの業務に宿るコンプライアンス
企業人にとって、責任感がプラスに働く場合とマイナスに働く場合がある。一人ひとりの強い責任感を常にプラスに働かせるための取り組みがコンプライアンスであり、それぞれの業務の中にコンプライアンスが宿っている。
判断に迷った時の5つの視点として「法令遵守、経営理念、社会常識、消費者、自分の心」があり、コンプライアンスを軸とした経営は、そこで働く人たちのモチベーションとロイヤリティー(愛社精神)を向上させ、さらなる企業の発展、繁栄につながるとして、まとめられた。
(講義リポート:総合企画委員 佐藤 直人)