第23期経営倫理士講座 第6回⑧講義レポート

講師:小山 嚴也 
講師所属等:経営倫理実践研究センター上席研究員/関東学院大学経営学部長・教授
講義テーマ:「経営倫理とCSR/SDGs」

気づいていなかったイノベーションに出会う

 第6回講義⑧は7月16日、小山嚴也氏( 経営倫理実践研究センター上席研究員/関東学院大学経営学部長・教授 )による「経営倫理とCSR/SDGs」。
  CSR(企業の社会的責任)について平易に解説するとともに、身近な事例を用いてその遂行に関して気を付けるべき点などを考察した。またSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)について概説し、各企業がどのように取り組むべきか、実際の行動目標についても言及された。

「持続可能な発展」の流れを説明する小山講師

■研究から見るCSR・CSV

 広く世間一般では、CSR・CSVをめぐる誤解や混乱がまだ存在しているようである。「CSRは社会貢献活動(フィランソロピー)だけである」とか、「CSRは、もはや古くてこれからはCSVだ!」などといった誤解や混乱である。
 しかし、両者の研究は、すでに1970年代後半からキャロルのCSRピラミッドモデルで提唱されていて、CSRとは「ある時点での社会の期待に応えること」と定義され、4つの責任(経済的責任、法的責任、倫理的責任、社会貢献責任)でCSRは明快に説明されている。
 また、ポーター&クラマーにより、CSV=社会的課題対応で社会的価値・経済的価値創造と説明されていて、社会的課題に対応するためにイノベーションを起こしてコストを削減したり、既存市場での差別化や新規市場の可能性を模索するなど、競争環境整備を図り、イノベーションにより社会的価値や経済的価値を創造することが肝要であると説いている。

■世界を変えるためのSDGs

 世界の研究者は、CSRやCSVという言葉より、Sustainability、つまりSDGsという言葉で研究をしている人が圧倒的に多い。
 「持続可能な発展」というキーフレーズが世界的な動きであり、その流れの中から「世界を変えるための17の目標」SDGsが、2015年9月の国連サミットで採択された。
 SDGsは「持続可能な世界」を実現するために17のゴール、169のターゲット、232の指標から構成されていて、地球上の誰一人として取り残さない目標で、発展途上国のみならず先進国も取り組むユニバーサル(普遍的)なものであることが特徴である。

 SDGsに対する日本政府の見解として、公的セクターのみならず民間セクターが社会的課題の解決に重要であるとしている。民間企業の資金や技術を社会課題の解決に役立てることがSDGsの達成に向けた鍵でもある。したがって、民間企業がSDGsを社会貢献活動の一環として取り組むのみならず、SDGsを自らの本業に取り込み、ビジネスを通じて社会的課題の解決に貢献することが大切であるとした。

■社会的視点で生まれるイノベーション

  SDGsは経済的価値と環境・社会的価値の両立を目指しているものであり、ボランティア活動でもない。各企業は製品・プロセス・ビジネスモデルでイノベーションを起こし、環境と人権を強化しつつ、新たな市場の出現を待つことがSDGsの本来の目標である。
 各企業にとり、SDGsに対応することは、今まで気づかなかったニーズ(課題)に出会うことであり、社会から見れば気づいていなかったソリューションに出会うことになると解説し、世界共通言語のSDGsの169のターゲットや232の指標に目を向けることが、社会的視点で考えることになり、そこにイノベーションが生まれるとされた。

           (講義リポート:ACBEE総合企画委員 鈴木 威生)