第23期経営倫理士講座 第9回⑬講義レポート

講師:両角 晃一
講師所属等:株式会社 テレビ朝日常務取締役/経営倫理士
講義テーマ:「情報リテラシーを養い時代を生き抜く」

「既存メディア」の変革に期待する声も

 第9回⑬の講義テーマは「情報リテラシーを養い時代を生き抜く」。GAFA、すなわちグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの総称とされるIT世界で確固とした地位を占める大企業。その巨大で圧倒的なシェアによるサービスが、スマートフォンの急速な普及によってネットを介して情報集積と拡散を生み、既存のメディアでは考えられないような時代を迎えている。講義は、誰もが情報発信できるメディアの新時代におけるソーシャルメディア、ネットメディアの考え方や情報の危うさなどを正しく見分ける能力=情報リテラシーについて解説された。

メディア激変の時代

“危うい情報”を見分ける能力(リテラシー)について
講義する両角講師と講座風景㊦

 メディアには、新聞やテレビ、 ラジオといった「伝統的メディア」、 ツイッターやフェイスブック、LINEなどの「ソーシャルメディア」、NETFLIXやAmazonプライムといった動画配信サービスの「ネットメディア」がある。特に動画配信サービスが開始されてからは、従来の発行部数や視聴率を取り合う競争から「時間」を取り合う競争に変化している。また、スマートフォン(スマホ)の急速な普及によって、今はスマホファーストの時代であり、今後も5Gの時代が近づき、医師による遠隔診療や自動運転などにもその応用が期待されている。

■フェイクニュース、フィルターバブルの危うさ

 新聞、テレビといった「既存メディア」が弱体化する一方、「ソーシャルメディア」、「ネットメディア」が急成長しているが、表現の自由度が高く、倫理面での社会への悪影響が心配である。既存メディアはBPO(放送倫理検証委員会)による放送倫理、番組向上の審査があるが、ネット空間はタブーに挑戦するかの如きである。トランプアメリカ大統領の選挙で顕在化させたように「フェイク(偽)ニュース」という“危うい情報”が氾濫し、うそやあいまいな事柄が繰り返し言及されることで「オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)」となっていく状況が生まれている。 また、「フィルターバブル」とは、ユーザーが見たくない情報は遮断され、異論・反論と接触する機会までが遮断されてしまうのである。

■高まる情報リテラシーの重要性

 2018年のNHK放送文化研究所のインターネット調査(16~29歳男女)では、「もっとも信頼できるメディアは何か?」の設問に対して、テレビ21%、新聞15%、検索サイト12%、SNS9%であり、メディアの信頼度という意味では、「既存メディア」が「ソーシャルメディア」、「ネットメディア」を上回る結果となったが、最も深刻な結果は「信頼できるメディアがない」が31%に達したことである。 これからは、ユーザー側に正しい情報を見分ける情報リテラシー(読み解き判断する能力)の重要性を示唆している。情報リテラシーを養うためには、特定のメディアの情報をうのみにせず、複数のメディアの情報をクロスチェックすることが重要であり、正統派ジャーナリズムを見分ける「審美眼」を持つことが大事である。

     ++++++

 メディアの功罪は、常に関心の的である。本日の講義、質疑応答の中でも「経営倫理」の観点から、「既存メディア」の変革に期待する声があった。まず、「既存メディア」がユーザーの多くの信頼を獲得することにより、メディア全体のコンプライアンス向上に繋げることが大事である。併せて、ユーザーの「審美眼」を持つことの大切さを学んだ講義であった。

(講義リポート:ACBEEプロジェクトプランナー 村瀬 次彦)